今回は、adviceという名詞、そしてadviseという動詞を、辞書を見ながら使い方を再確認していきたいと思います。
まず、前回のコラムで、英語のadvice/adviseは、「専門知識がある者が与えるもの」「深刻な影響を及ぼすようなことがらにも使う」ということを述べました。このことは、最近の優秀な学習辞典には、みなきちんと書いてあります。
この冒頭部分だけでなく、コラムのような囲み記事の中で、日本語との違いを解説しているものもあります。やはり、知っている言葉だからとあなどらずに、改めて辞書を引いてみるのはおすすめです。
このような日本語と英語のニュアンスの違いは、おそらくリーディングの授業のときには、あまり気にならなかったのではないかと思います。たとえば、
You should seek medical advice.
という文を、「医師の助言を求めるべきだ」ないし「医師の診断を受けるべきだ」と訳せる人は、多いと思います。しかし、「医師の診断を受けるべきだ」という日本語からadviceという語を繰り出せる人の数は、ぐっと減るのではないでしょうか。同じように、「無料法律相談」はfree legal adviceでよいのですが、これもなかなかパッとは思いつかないですね。英語から日本語に訳すときには問題にならなかったことが、英語で話す、英語で書くということをしようとしたときにはできない、というのは、本当によくあることです。
ここは、「advice=アドバイス、助言」という単純な図式でしか理解していないと、なかなか抜け出すことはできません。「adviceは、日本語のアドバイスの語感よりも、かたく重大なイメージの場面でも使うことができ、特に専門家からの助言のことも指すことができる」ということを理解して、どんな場面で使えるのかを想定しておくことが大切です。これは、「辞書は1行目しか読まない」「ネットの無料翻訳を使う」をやっていては、永遠に身につくことはありません。今の辞書は、とても優秀です。せっかく英語学習に時間を使うなら、ぜひ、よい辞書をお手元に置いて、どんどん使ってくださいね。
また、実際にadviseという動詞を使うときに、「誰に対して」「何について」「何をするように/しないように」助言を与えるのか、ということについて、学習辞書は、とても丁寧に整理してくれています。
たとえば「誰に対して」「何をするように」の部分は、どの辞書も[advise 人 to do]という使い方を、必ず示していると思います。これ以外にも、
・advise 人 not to do(人に~しないように助言する)
・advise doing/名詞(~するように助言する)
・advise against doing/名詞(~しないように助言する)
・advise(人)on/about 名詞((人に)~について助言する)
・advise(人)that S+V((人に)SがVするよう助言する)
といった型が、たくさん示されています。実際に作文するときには、自分の言いたいことを、この型に当てはめればOKなのです。とても便利ですね!
名詞のadviceでも同様です。辞書をきちんと読んでいくと、adviceという語は
・advice on/about 名詞(~についてのアドバイス)
・advice to do(~するようにというアドバイス)
・ask 人 for advice(人にアドバイスを求める)
・seek advice((かたく)人にアドバイス/専門知識を求める)
・take/follow one’s advice(~のアドバイスに従う)
・S+V on/against one’s advice(Sが~のアドバイスに従って/反してVする)
といった形で使える、ということが読み取れます。示された型や用例などをみていくと、自分が英文を作るときのヒントがいっぱいなのです。
このタイプの情報は、一般に、和英辞典よりも英和辞典の方が豊富です。実は、和英辞典で使いたい単語をみつけたら、その単語を英和辞典でもう一度引いてみる、というのがおすすめの使い方。英和辞典の示してくれる使い方や用例を見ながら自分の言いたいことに当てはめていくと、きちんとした英文ができるようになりますよ。
辞書を引くとき、「意味」の部分や「1行目」しか読んでいない、という人は、とても多いのではないでしょうか。これは本当にもったいないことです。15年前と比べ、英語の辞書の質は、飛躍的に向上しています。コーパスを導入し、その後も版を重ねている辞書は、私が学生時代に使っていた辞書とかなり違っていて驚かされます。スマートフォンのアプリでも、電子辞書でも、紙の辞書でも、お好みのものでかまいません。ぜひ、最新の英和辞典をひとつお手元に置いて、しっかり読んで、たくさん使ってくださいね。