英語にもちゃんとあることばなのに、日本語とはちょっと使い方が違う。7回めは、「フォロー」という語をみてみたいと思います。
まず、私たちはどんなときに「フォロー」という日本語を使っているか、確認してみましょう。
近頃だと、パッと思いつくのは「SNSでフォローする」というときですね。インスタグラム、フェイスブック、ツイッターなどのSNSで誰かを「フォロー」すると、その人のアップした文章や写真などを継続的に見ることができます。この「フォローする」は英語でもそのまま使うことができて、「Follow me on Twitter.(ツイッターでフォローしてね)」のように言うことができます。
「ラグビーのことは新聞や雑誌でもフォローしている」というときの「フォローする」は、「情報を追っている」という意味ですね。この意味のときも、英語のfollowをそのまま使ってI follow rugby news in newspapers and magazines.のように言えます。
それから、みなさんが「フォロー」という語をいちばんよく使うのは、こんなセリフなのではないでしょうか。
「ミスしたとき、上司がフォローしてくれた」
「私がフォローに回ります」
「その言い方、フォローになってないよ」
私たちは、人が失敗してしまったときそれを助けたり、また失敗しないように手を貸すことを、「フォローする」といいます。しかし、この言い方は和製用法ともいうべきもので、英語では使うことができません。もしWhen I made a mistake, my boss followed me.と言ってしまったら、「私に続いて上司も同じ間違いを繰り返してしまった」、という意味になってしまいます。または、「ミスをしたら、上司が私の後をついてきた」という意味にも読めるかもしれませんね。いずれにしても、「助ける」という意味にはなりません。
「補助する」「助ける」の意味で「フォローする」といいたいときには、単純にhelpでいい場合も多いです。「上司がフォローしてくれた」というなら、My boss helped me.でよいでしょう。「私がフォローに回ります」と言いたければ、たとえば「雑事は私が引き受けます」という意味でI will take care of those odd jobs.などと言ってもいいかもしれません。
「その言い方フォローになってないよ」とか、「後でフォローしておいた」というようなときは、失言や誤解を招くような発言に対する補足説明をすることや、本人に代わって謝っておく、というような意味合いですね。こういった場合は1単語で言い換えをすることはむずかしく、それぞれ場面に応じた言い方を考えなければなりません。単純にfollowという動詞ではカバーできないということを、どうぞ覚えておいてください。
そして、「フォロー」のもうひとつの和製用法は、ゴルフなどでいう「追い風」の意味のフォローです。これは、英語ではtailwindといいます。「後ろからついてくる風」という意味で、following windという言い方もできるでしょう。このfollowing windのfollowの部分だけが、日本語になったのですね。そして「向かい風」の意味の「アゲインスト」も、和製用法です。向かい風は、headwindです。「向かい風に向かって進む」というときgo against the windのようにいうことができますが、このときのagainstは前置詞なので、形容詞のように×against windという形で使うことはありません。
ちなみにfollowという英単語の最も基本の意味である「ついて行く/ついて来る」という意味は、日本語の「フォロー」ではカバーされていません。「ああ、女の子がお母さんをフォローしているね」なんて言いませんよね。カタカナ語と英語では、こういうふうに、意味がずれてしまうものなのです。