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第16回 【関係人口】かんけいじんこう

筆者:
2020年12月28日

[意味]

特定の地域やその地域の人々とさまざまな形でつながりを持つ人の数。移住による「定住人口」と、観光客主体の「交流人口」の中間的な存在。その地域を応援するファン。

[関連]

定住人口・交流人口

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「関係人口」は地方を元気にしようと取り組む人たちの間で提唱され始めたといいます。ローカルジャーナリスト・田中輝美さんの著書『関係人口をつくる 定住でも交流でもないローカルイノベーション』(木楽舎)によれば、初めて使ったのは『東北食べる通信』編集長の高橋博之さんなのだとか。人口の減少や高齢化で地域づくりの担い手が不足するなか、都市部の住民が地域と関係を持ちながらその支え手になるという考え方です。

地方とのつながりを築き、将来の移住・定住につながるようなきっかけづくりの一面もあるのでしょう。「関係人口創出・拡大事業」を実施する総務省では、対象を①その地域に勤務や居住経験のある人②ふるさと納税の寄付者③都市部で暮らしながらスキルや知見を地域の課題解決に役立てたい人――としています。

日本経済新聞での「関係人口」の初出は2015年5月23日付朝刊の近畿経済面でした。兵庫県豊岡市長の中貝宗治氏がインタビューで「頻繁に豊岡を訪れて定住にも結びつく『関係人口』を増やしていきたい」と述べています。この年の出現記事はこの1件のみで、16、17年と0件でしたが、総務省が創出・拡大事業に取り組み始めた18年から記事は増加傾向となりました。そしてコロナ禍の20年、働きながら休暇を過ごすワーケーションの誘致で「関係人口」を増やそうという地域の活発な動きが記事に見られます。テレワークが増え、本社機能の一部を地方に移す企業も出てきました。「関係人口」から「定住人口」への動きが加速していく可能性もあります。

私は東京から北海道函館市に約30年通っています。都市対抗野球の久慈賞に名を残す、巨人初代主将の久慈次郎に興味を持ったのがきっかけでした。所属した日本最古の社会人野球チーム、函館太洋倶楽部(函館オーシャン)の歴史を調べるため、あまり観光もせずに図書館にこもったり、関係者のもとへ取材に行ったり。06年に100年史をまとめた『函館オーシャンを追って』を出版し、17年には函館市中央図書館の「郷土の歴史講座」で講演をしました。こんな活動を振り返ってみると、私は「関係人口」という語ができる前から函館市の「関係人口」だったのだなと実感します。

各地域にもそれぞれ大勢のファンがいることと思います。応援の仕方もいろいろあることでしょう。いつの間にかどこかの「関係人口」になっていたという人は意外に多いのではないでしょうか。

 

「貨客混載」の登場記事件数

*日本経済新聞の記事を調査。2020年は11月まで。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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