[意味]
根拠が曖昧であるにもかかわらず、絶対に安全であるとする思い込み。(大辞林第四版から)
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「安全神話」と聞いて、皆さんはまず何を思い浮かべるでしょうか。新聞記事を見ると、大きな事件や事故が起きるたびに、安全神話の崩壊が繰り返し語り続けられています。
記事データベース「日経テレコン」で「安全神話」を検索したところ、日本経済新聞で最も古い記事は1979年4月13日付の朝刊産業面の「原発安全神話崩れる“最後の切り札”に不信増幅」でした。これは米国スリーマイル島原子力発電所事故に関連したもの。続いて1985年8月12日に起きた日本航空のジャンボジェット機墜落を受けた「安全神話揺らぐジャンボ」(8月14日付)という社説を確認できました。
1990年以降の「安全神話」の出現記事件数をグラフにしてみたところ、大きな山が2つ、1995年(63件)と2011年(85件)に見えます。1つめの1995年は1月に阪神大震災が、3月には地下鉄サリン事件が起きた年でした。それまで安全とされてきた日本の耐震技術や治安の脆弱性が露呈、人々に大きな不安を抱かせたものでした。そして2つめの2011年は、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)と津波による東京電力福島第1原発事故が起きた年であり、いまだ記憶に新しいものです。
原発事故は国語辞典にも影響を与えているようです。主な国語辞典17種を見ると、「安全神話」を見出し語として取り上げているのは中型辞典の『大辞林』と『広辞苑』の2冊で、いずれも最新版から。『広辞苑』では「安全に関する神話。根拠もなく絶対に安全だと信じられていること」という語義のほか、ずばり「原発の―が崩れる」という用例も載せています。このほか、小型辞典の5冊が「神話」の項目の用例に「安全神話」を挙げています。早いものでは『ベネッセ新修国語辞典』(初版)が2006年、『学研現代新国語辞典』(改訂5版)が2012年で、『三省堂国語辞典』は2014年の7版からの掲載となっていました。7冊のうち6冊が2011年の原発事故以降に改訂した版から「安全神話」を載せたことになります。
ここ数年の記事では安全資産といわれた「円」や「国債」の安全神話も見られました。世の中に100%の安全などないことを肝に銘じなければなりません。
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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。