(QWERTY配列の変遷100年間(3)からつづく)
1923年7月、横浜のドットウェル商会に、アンダーウッド・タイプライター社から横書きカナタイプライターが到着しました。カナ58字、濁点、半濁点、長音符、数字10字、記号13字を収録した42キーの配列は、山下芳太郎の依頼で、スティックネー(Burnham Coos Stickney)が設計したものでした。
1952年12月、日本レミントンランド社は、46キーのカナ・ローマ字タイプライターを発売しました。横書きカナタイプライターに、アルファベット大文字26字を追加すべく、小書きのカナと数字の01を削除し、記号も9字に絞ったキー配列です。数字は最上段に移動しており、アルファベットのキー配列は、Pを除いてほぼQWERTY配列となっていました。カタカナのうち、シフト側にあったセソヘケムメは、別のキーに移されていました。
1964年4月、日本IBMは「IBMモデル72電動カタカナタイプライター」を発売しました。44キーの「IBM Selectric Model 72」をベースに、カタカナ45字、濁点と半濁点、アルファベット大文字26字、ハイフン(長音符と兼用)を含む記号5字、数字10字を収録する代わりにカタカナのヲを削除したキー配列でした。
1970年9月、電電公社は、加入データ通信サービス(コンピュータの共同利用を目的とした遠隔端末サービス)を開始するにあたり、「DT-211形データ宅内装置」を準備しました。4段シフト48キーの配列は、アルファベットや記号に関しては「Teletype Model 33」をほぼ踏襲していました。カタカナに関しては、「IBMモデル72電動カタカナタイプライター」でシフト側にあったムとロを移動し、小書きのカナを復活していました。
日本電子工業振興協会は、「DT-211形データ宅内装置」をもとにコンピュータのキー配列の標準化をおこない、このキー配列は1972年2月にJIS C 6233として制定されました。JIS C 6233は、カタカナに関しては「DT-211形データ宅内装置」のキー配列そのもので、アルファベットや記号に関しては「ISO 2530」とほぼ互換でした。
JIS C 6233は、その後1987年3月にJIS X 6002という規格番号に変更されましたが、キー配列はほぼそのままでした。日本のコンピュータのキーボードは、今もJIS X 6002に従っていて、濁点のそばにセやケがあったり、8と9のシフト側にカッコが収録されていたりするのです。