三省堂国語辞典のすすめ

その21 ジャケ買いしたくなる辞書。

筆者:
2008年6月25日
【『三国 第六版』の外観】
【『三国 第六版』の外観】

『三省堂国語辞典 第六版』が刊行される直前、初めて見本を見て、その洗練されたデザインに魅了されました。並版は明るいオレンジ色、小型版は白色の地で、全体に細かい市松模様の濃淡がついています。高級なお菓子の箱のようでもあります。表題はくっきりと黒い細身のゴシック体。全体の印象をひとことで表現すれば、「モダンでシンプル」です。この装丁は、三省堂デザイン室によるものです。

一般に、国語辞書といえば、重厚、威厳がある、奥が深いというようなイメージを持たれています。そのイメージを踏まえるせいか、多くの国語辞書のデザインは、地味であり、時にはやぼったさを感じさせることもあります。

そうした中で、かつての『新明解国語辞典 第四版』(1989年)の装丁は、新鮮な感じを受けました。箱の隅に、ポップな(斬新でおもしろい)字体で「ShinMeiKai」のロゴを配置してあり、独自の語釈で知られる『新明国』の雰囲気をよく表していました。私はひそかに快哉を叫んだものでした。

【『新明国 第四版』のロゴ】
【『新明国 第四版』のロゴ】

今回の『三省堂国語辞典 第六版』も、ぜひ新しさを感じさせるデザインにしてもらえればいいなと、かねて思っていました。はたして、すばらしい装丁でした。CDや本などのデザインが気に入って買うことを「ジャケ買い」と言いますが、ついジャケ買いしたくなる辞書になりました。

実用面から見ると、今回の装丁は、表題などの文字を上のほうに配置してあるため、金文字が手でこすれにくいという長所があります。私を含め、辞書はビニールカバーを取って使うという人は多いでしょうから、こういうデザインはありがたいのです。

【持っても文字がすれない】
【持っても文字がすれない】

外観のことを中心に書きましたが、ページを開いたときに見やすいことも『三国』の特長です。これについては、佐久間孝夫・常務取締役営業局長の説明があります(『全国書店新聞』2008.1.1⇒記事内容はこちらのページの下のほうにあります)。どうやって見やすい紙面にしてあるか、その秘密については、そちらをご覧ください。

筆者プロフィール

飯間 浩明 ( いいま・ひろあき)

早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。 早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。

URL:ことばをめぐるひとりごと(//www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)

【飯間先生の新刊『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』】

編集部から

生活にぴったり寄りそう現代語辞典として定評のある『三省堂国語辞典 第六版』が発売され(※現在は第七版が発売中)、各方面のメディアで取り上げていただいております。その魅力をもっとお伝えしたい、そういう思いから、編集委員の飯間先生に「『三省堂国語辞典』のすすめ」というテーマで書いていただいております。