−連語情報とスペースとの戦い−
辞書編集がスペースとの戦いであることは,WISDOM in Depth: #27でもふれた。スペースの制約を受けるのは,辞書の主役のひとつである用例も例外ではない。英語学習者が英語を発信しようとする場合,名詞であればどのような形容詞や動詞と用いられるのか,形容詞であればどのような名詞や副詞と用いられるのか,動詞であればどのような名詞や副詞と用いられるのかといった情報は欠かせないが,そういった情報はできれば用例として与えられるのが理想的である。しかしながら,約2,000ページという限られたスペースでは,十分な用例を示すことができない場合も少なくない。
『ウィズダム英和辞典』では,たとえば,動詞や形容詞では語義とともに,主語や目的語の位置にどのような名詞が現れるのかを示すため「〈人が〉」や「〈人〉を」といった選択制限表示を与えていることはもちろん,どのような副詞としばしば用いられるかといった情報を注記やコラムで示している。下のtalkの例を見られたい。
連語する副詞の使用域等に差がある場合は,記述が複雑になりがちになるので,表現欄としてコラム化してある。特に高頻度のものは,太字の斜体にしてある。
また,高頻度の用法については,「コーパスの窓」としてコラム化し,十分なヴァリエーションを示して学習の効率化を図った。
紙の辞書はスペースの制限があるが,第2版の刊行と同時に第2版利用者に無料で公開している『デュアル・ディクショナリー』では,事実上スペースの制限はないに等しいので,紙製版に比べて3,000用例を増加してある。今後ますます進化してゆく『デュアル・ディクショナリー』にもご期待いただければ幸いである。