突然ですが、みなさんは自分の名前を自信を持ってローマ字で書けますか?もちろん、「田中和夫」とか「中村あゆ」(同名の方、申し訳ありません…<(_ _)>)といったどう転んでもローマ字の書き方に差が出ないような名前の方もいらっしゃるでしょう。しかし、世の中には「松田謙次郎」のように、Matsuda なのかMatudaなのか、Kenjiro なのかKenzirouなのか、はたまたKenziroh なのかと一度ならず自分の名前のローマ字表記に迷わざるを得なかった人もいるはずです。
そもそもローマ字表記とはそもそもどういうものであったのか。ローマ字表記には大別して「訓令式」と「ヘボン式」があること、実際には場合によりどちらも使われていること、などは例えうっすらとでも誰しもご存じでしょう。ごく簡単に言えば、ヘボン式は英語の発音を基礎に、訓令式は音素表記という原則で日本語をローマ字化する体系です。よって例えば「し」「つ」「ち」はヘボン式なら shi, tsu, chi となり、訓令式は si, tu, ti と綴れと言うわけです。我々はこの2つの方式を小学校で習ったはずで、よって誰しもローマ字と言えば「なんとなく2方式があったよなー」と思うわけです(正確には、訓令式にはその先駆けとして、非常に似た「日本式」という方式もあったのですが)。そしてローマ字論争と言うのは、この2つの方式のいずれを採用するべきかという論点を巡ってのものだ、というのが大方の理解でしょう。
ところが、こうした理解は実はローマ字問題のごく一部をカバーするものでしかありません。ローマ字に関してピカ一の情報量を誇ると思われるサイト「ローマ字相談室」 (//www.halcat.com/)は、こうした安直な理解が大きな誤りであることを嫌と言うほど教えてくれます。
このサイトに曰く、日本語ローマ字表記法には少なくとも9つ(うち一つはこのサイトオーナーである海津知緒さん考案の方式)あり、中には国際規格であるISOで定められたものまである。曰く、ヘボン式と言われるが、そのヘボン式とはどういうものか、その方式を記述した文章はないらしい(つまり公的規格ではない)。曰く、パスポートに用いられるローマ字方式は、厳密にはヘボン式とは異なり(長音を表す^や ̄ などの符号を使わない)、「外務省式」という独自方式である、などなど。そうです、このサイトを読むだけで、我々のローマ字理解は大きく揺らぎ出しますね。なんと9つの方式。ローマ字こそ表記バリエーションの王国だったわけです。かな遣いと比べれば、そのアナーキーさが分かろうというものです (((( ;゚д゚))))アワワワワ
ローマ字法の混乱には、また意外な側面も……(次回へつづく)