新字の「尭」は、昭和56年10月1日の戸籍法施行規則改正で、人名用漢字になりました。旧字の「堯」は、平成16年9月27日の戸籍法施行規則改正で、人名用漢字になりました。つまり現在では、「尭」も「堯」も出生届に書いてOK。でも、「堯」が子供の名づけに使えるようになったのは、「尭」より23年も後のことでした。
昭和53年11月、法務省民事局は全国の市区町村を対象に、子供の名づけに使える漢字として追加すべきものを調査しました。昭和54年1月25日に発足した民事行政審議会では、この調査をもとに、人名用漢字の追加が議論されました。この時、追加候補となった漢字の一つに、旧字の「堯」がありました。
ただ、旧字の「堯」をそのまま人名用漢字に加えるわけにはいかない、と、民事行政審議会は考えました。というのも、この時点の常用漢字表案(昭和54年3月30日、国語審議会中間答申)には、「暁(曉)」と「焼(燒)」が収録されており、これらの漢字の右半分は「堯」ではなく「尭」になっていたからです。つまり、常用漢字表の「暁(曉)」や「焼(燒)」に字体をそろえるなら、旧字の「堯」ではなく、新字の「尭」を人名用漢字に追加すべきだ、ということになったのです。この結論にもとづいて、昭和56年10月1日、「尭」が人名用漢字に追加されました。
しかし、新字の「尭」が人名用漢字に収録されても、旧字の「堯」を子供の名づけに使おうとする人は、後を絶ちませんでした。そのたびに各地の出生届窓口は、新字の「尭」へと誘導するハメになっていました。これに対し、法制審議会のもと平成16年3月26日に発足した人名用漢字部会は、常用漢字や人名用漢字の異体字であっても、「常用平易」な漢字であれば人名用漢字として追加する、という方針を打ち出しました。それまでの一字種一字体の原則を曲げて、複数の異体字を人名用漢字として認めるという方針に転換したのです。
人名用漢字部会では、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、平成12年3月に文化庁が書籍385誌に対しておこなった漢字出現頻度数調査、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。平成16年8月25日、人名用漢字部会は、人名用漢字の追加候補488字を選定し、法制審議会に報告しました。この488字の中に、旧字の「堯」が含まれていました。「堯」は「榮」と同じく、漢字出現頻度数調査の結果が50~199回の範囲内で、全国50法務局のうち8以上の管区で出生届を拒否されたことがあって、しかもJIS X 0213の第2水準漢字だったので、追加候補となったのです。
平成16年9月27日、戸籍法施行規則は改正され、これら追加候補488字は全て人名用漢字になりました。旧字の「堯」も人名用漢字になり、それ以降は「尭」も「堯」も出生届に書いてOKなのです。