「書体」が生まれる ベントンと三省堂がひらいた文字デザイン

定価
3,630円
(本体 3,300円+税10%)
判型
A5判
ページ数
336ページ
ISBN
978-4-385-34915-2

ベントン彫刻機と三省堂がなければ、日本の活字デザインの歴史は変わっていた!?

雪朱里 著

本書推薦の言葉

日本の印刷界近代化の貴重な記録。
それもタイポグラフィの原点にスポットを当てた内容は、我が国では初めてではないだろうか。
まさに“渾身の作品”だ。

小塚昌彦(タイプデザインディレクター)

 

かつて、活字のデザインは、ごく限られた天才=「種字彫刻師」の頭の中にのみあるものだった。

現代の「書体デザイン」につながる手法を伝えたのは、辞書の「三省堂」とベントン彫刻機だったのだ。

これは、「書体」が生まれるその舞台裏で奔走したひとびとの記録である。

 

この書籍は、三省堂辞書サイトでの連載「「書体」が生まれる—ベントンがひらいた文字デザイン」を書籍化したものです。書籍化にあたり、再構成・加筆し、書き下ろしを加えています。

 

刊行を記念して、書籍に盛り込みきれなかった話題を「補遺」として公開中!

▶2021/8/20公開 補遺 第1回 ベントンのない世界
▶2021/8/24公開 補遺 第2回 歴史を書くということ――桑田福太郎・勝畑四郎の新資料
▶2021/8/27公開 補遺 第3回 桑田福太郎の書体研究① 大正時代にかんがえる「印刷物に適した書体」
▶2021/8/31公開 補遺 第4回 桑田福太郎の書体研究② 大正時代の「明朝体の研究」

特長

さらに詳しい内容をご紹介

刊行時プレスリリース

【文字にかかわるひと必読!】三省堂『「書体」が生まれる 三省堂とベントンがひらいた文字デザイン』刊行

著者プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)

ライター、編集者。

1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。

著書に『時代をひらく書体をつくる。――書体設計士・橋本和夫に聞く 活字・写植・デジタルフォントデザインの舞台裏』『印刷・紙づくりを支えてきた 34人の名工の肖像』『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)など。
一部執筆書籍に『一〇〇年目の書体づくり――「秀英体 平成の大改刻」の記録』(大日本印刷)、『T5―台湾書籍設計最前線』(東京藝術大学美術学部編、東京藝術大学出版会)、『文字は語る―デザインの前に耳を傾けるべきこと』(DTPWORLD編集部編、ワークスコーポレーション)などがある。
編集など担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)、『文字講座』(文字講座編集委員会、誠文堂新光社)、『文字本』(片岡朗著、誠文堂新光社)ほか。
『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

 

(書籍サンプル 撮影:坂野公一(welle design))

目次

は「なかみを見る」に一部掲載

口絵

ベントン彫刻機 / 三省堂「明朝漢字修正原図(鉛筆スケッチ)」 / 三省堂「明朝漢字3001番以上」墨入れ原図 / 三省堂「明朝漢字3001番以上」墨入れ原図(拡大) / 三省堂「昭和三十年研究試作 仮名関係」鉛筆スケッチ / 三省堂「ゴシック平仮名・片仮名」墨入れ原図 / 三省堂「明解国語辞典用平仮名・片仮名各濁音」墨入れ原図 / 三省堂 欧文書体「Ronaldson Old」墨入れ原図 / 三省堂「欧文白抜数字」墨入れ原図 / 三省堂「記号」墨入れ原図 / 三省堂「社名ロゴ」「SSD マーク」墨入れ原図 / パターン(文字原版) / 電胎母型 / 彫刻母型 / さまざまな金属活字 / 金属活字 / 自動活字鋳造機 / 活字組版(頁物) / 活字組版(端物) / ベントン彫刻機活字と母型

 

目次

はじめに——「書体」の誕生

第一章 三省堂の創業

三省堂を築いたひと・亀井忠一 / 「よいものは必ず、美しい」忠一と印刷工場 / 『日本百科大辞典』という冒険 / 採算度外視の「いいもの主義」 / 三省堂の経営破綻
コラム 種字彫刻師

第二章 「文字印刷」の三省堂へ

「文字印刷」に着目したひと・亀井寅雄 / 「文字の印刷」と「文字ならざるものの印刷」 / 運命の出会い 寅雄とベントン彫刻機
コラム インディアペーパーの開発 / 印刷優秀書籍の出版・印刷所

第三章 ベントン彫刻機導入の先駆者

印刷局とベントン彫刻機 ①二つのベントン彫刻機 / ②小山初太郎の欧米視察 / ③矢野道也とベントン / ④ベントン彫刻機の値段
築地活版とベントン彫刻機 ①入手年代 / ②関東大震災の影響 / ③もう一台のベントン / ④築地活版のベントン活用 / ⑤ベントン彫刻機の移籍

第四章 三省堂とベントン彫刻機

亀井寅雄の欧米視察 / 寅雄、今井直一を口説く / ベントンへの弟子入り / あたらしい工場の構想 / 工場建設を目前にして / ベントン彫刻機のゆくえ / もうひとつの重要な機械 / 関東大震災の大打撃 / 震災からの復興とポイント制活字の導入
三省堂の書体をつくったひとびと① 今井直一

第五章 三省堂の書体研究のはじまり

辞書だからこそ――ベントン彫刻機が必要だった理由 / 書体研究への着手 / 三省堂の活字の規格 / 蒲田工場の操業開始 / ベントン彫刻機の荷ほどき / カナモジカイと三省堂 / カナモジ活字の懸賞募集 / 桑田式カナモジ
三省堂の書体をつくったひとびと② 桑田福太郎

第六章 三省堂のベントン活字の誕生

書体研究室の移転と、母型製作の流れ / 「組立式」から「腐蝕パターン」へ / かな、そして明朝漢字の彫刻へ / ベントン彫刻母型への批判 / 三省堂活字をまもるために
三省堂の書体をつくったひとびと③ 松橋勝二

第七章 三省堂のベントン彫刻機の成果

5・5ポイント活字の新刻 / 書体設計士の教育――杉本幸治の経験から / 原図の書き方――三省堂の手法
三省堂の書体をつくったひとびと④ 杉本幸治
コラム 印刷関係の教育機関

第八章 戦渦の三省堂とベントン彫刻機

工場技師にくだされた特命 / ベントン彫刻機の疎開 / 三省堂工場の再出発
三省堂の書体をつくったひとびと⑤ 金子鷗亭

第九章 ベントン彫刻機の国産化

三省堂の決断 / 大日本印刷の決意 / 大日本印刷の原図制作

第十章 ベントン彫刻機の量産化

毎日新聞社と津上製作所 / 毎日新聞社の原図制作 / 新聞活字とベントン彫刻機

第十一章 ベントン彫刻機の普及と活用

岩田母型製造所とベントン母型の普及 / ベントン彫刻機の幅広い活用 / ベントン彫刻機がもたらした革命

おわりに——年表の一項目にこめられた、はかりしれない舞台裏

 

ベントン彫刻機 国産化年表

文献一覧

索引

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