10分でわかるカタカナ語

第9回 インセンティブ

2005年1月25日

どういう意味?

人の意欲を引き出すために「外部から与える刺激」のことです。

もう少し詳しく教えて

インセンティブ(incentive)は「人の意欲を引き出すために、外部から与える刺激」のことです。例えばプロスポーツチームと選手が、成績による出来高制で契約を行う場合、「出来高の仕組みを選手に与えること」をインセンティブ(=動機付け)と呼びます。また出来高そのものをインセンティブ(=報奨)と呼ぶ場合や、まれにですが、そのようにして引き出される意欲をインセンティブ(=意欲)と呼ぶ場合もあります。

なお「意欲を引き出す動機」を表す同義語にモチベーション(motivation)がありますが、こちらは自発的動機付け(=彼女にモテたいなど)も含んだ概念であることに注意してください。インセンティブは「外部から与える」動機付けを表す言葉です。

どんな時に登場する言葉?

広い分野でこの用語が用いられます。例えばマーケティングの分野では、販売促進手法の一環として見本品配布・プレゼント・キャンペーンなどが実施されますが、このような“消費者に対する刺激”がインセンティブ(または消費者インセンティブ)と呼ばれます。また経営の分野では、社員のやる気を引き出すための仕組み(報奨制度など)がインセンティブと呼ばれます。つまりは、社会性を持つあらゆる分野において、インセンティブの語が用いられるわけです。

どんな経緯でこの語を使うように?

最近この語が頻出するようになった背景には、日本の企業社会が「年功序列型から、成果主義型へ変化していること」が関係している可能性があります。この変化によって、企業によるインセンティブ(=報奨的仕組み)提供の機会が増えているのです。例えば、会社への貢献度が高い従業員に、報奨として自社株の購入を認める「ストックオプション制度」(国内では1997年に解禁、2002年に規制緩和)も、インセンティブ制度の好例でしょう。

インセンティブの使い方を実例で教えて!

インセンティブが働く

ある人の意欲を引き出すための「報奨的な仕組み」がうまく機能している場合に「インセンティブが働く」と表現することができます。例えば「我が社の給与制度は単純な年功序列制なので、社員が能力を高めるためのインセンティブが働いていない」などと表現できます。

インセンティブを与える/高める

ある人に意欲を引き出すための「報奨的な仕組み」を与える場合、「インセンティブを与える」と表現できます。また「報奨的な仕組み」をより効果的にすることを「インセンティブを高める」と表現できます。例えば「優良顧客には割引などのインセンティブ(=報奨)を与える」「新技術開発のため、発明報奨金などによってインセンティブ(=報奨性)を高める」などの表現が可能です。

言い換えたい場合は?

カタカナ語として用いられているインセンティブには、大きく分けただけでも(1)外部的動機付け(2)そのための仕組み(3)得られる意欲、という三つの意味があります。従って言い換えには注意が必要です。このうち(1)は「動機付け・誘因」などの言い換え方法があります。また(2)は「報奨・報奨的な仕組み」などの言い換えがあるほか、より具体的に「報奨金・奨励金・景品・優遇措置」などの語をあてる方法があります。(3)は「意欲」の語をあてるのが良いでしょう。なお国立国語研究所では(1)の意味として「意欲刺激」という造語を提案しています。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

ご褒美旅行 企業が社員のやる気を引き出すために実施する“報奨旅行”のことをインセンティブツアー(インセンティブ旅行)と呼びます。

筆者プロフィール

三省堂編修所

編集部から

あなたはマスコミ報道や日常会話の中で、突然意味の分からないカタカナ語に出会い、困ってしまったことはありませんか?

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そこでこのコーナーでは、社会での使用頻度が高いわりに意味がよく知られていないカタカナ語を選び出し、それらの意味や使い方について「10分でわかる」ようまとめてみました。このコーナーを見れば、あなたもカタカナ語が怖くなくなります。