10分でわかるカタカナ語

第32回 コンセンサス

2006年2月7日

どういう意味?

「複数の人による合意」のことです。

もう少し詳しく教えて

コンセンサス(consensus)とは「複数の人による合意」のことです。複数の人(狭義には大多数の人)が関与するところが特徴で、単に「同意」を表すアグリーメント(agreement)とはこの点で異なります。

例えば「首相公選制に関しては国民のコンセンサスが得られていない」「事業拡大は、経営陣全体のコンセンサスとなっている」などの用法がありますが、これらのいずれも「複数の人による合意」をさします。

ただし、コンセンサスの語を用いる文章の中には、「完全一致による合意」を表すものと、「大多数による合意」を表すものが混在しているので、読解には注意してください。

どんな時に登場する言葉?

広い分野で用いられる語ですが、特にビジネスと政治の分野で頻出する用語であるようです。例えば、ビジネスの分野では「この案件について営業部のコンセンサス(=合意)を取っておいて」などの用法があります。「根回し」に似たようなニュアンスを持つ事も多いようです。また政治の分野でも「ナショナルコンセンサス(=国民的合意)」「コンセンサスポリティックス(=合意に基づいた政治)」などの用法があります。

ちなみに株式市場の分野では、市場関係者に共通した「株価・業績・経済指標などの予想値」のことをコンセンサスと呼んでいます。

どんな経緯でこの語を使うように?

各分野で、古くから用いられている語のようです。

コンセンサスの使い方を実例で教えて!

コンセンサスをとる/得る

目的となる人やグループについて、ある事柄の合意を取り付けるような場合、これを「コンセンサスをとる/得る」と表現できます。「新商品の方向性について、営業部のコンセンサスを取っておいて」などの用法があります。ビジネスの場でこの用法が登場した場合は、「根回し」のニュアンスを持つことも多いようです。

コンセンサスの形成/コンセンサスの醸成

ある事柄について、集団内での合意を形成するような場合、これを「コンセンサスの形成」「コンセンサスの醸成」などと表現できます。「ごみ出しのルールについて、マンションの住民全体でコンセンサスを形成する必要がある」「首相公選制について、国民全体のコンセンサスを醸成することを考えている」などの用法があります。

ナショナルコンセンサス

国家の政策に関する国民的合意のことを「ナショナルコンセンサス」と呼ぶ事が出来ます。「原子力エネルギーの使用に関するナショナルコンセンサスの内容は、国によって異なっている」などのように用います。

コンセンサス方式

国連では「コンセンサス方式」と呼ばれる決議方法があります。これは投票による決議ではなく、「議長提案について明確な反対意見が表明されなかった」ことによって決議を成立させる方式です。「総論で合意されている」議題であるものの、「各論で反対意見を持つ国」が存在するような場合、投票によって対立構造が明確化することがあるので、これを避けるために考案された経緯を持っています。ただし一般分野で「コンセンサス方式」の語が用いられた場合、「全会一致」の意味と「大多数一致」の意味が混在していますので、読解には十分に注意してください。

言い換えたい場合は?

「意見の一致・合意・同意・総意・共感」などの語を試してみてください。ビジネスなどの分野では「根回し」の語で代用できる場合もあります。また政治の分野では「世論」の語を用いることも可能です。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

わかりにくいカタカナ語の代表格 国立国語研究所の調査では、コンセンサスの意味が分かる人は国民の25%未満でした。また糸井重里が主宰するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の「オトナ語の謎」では、職場で用いられる意味の分かりにくい言葉として、コンセンサスが紹介されました。

筆者プロフィール

三省堂編修所

編集部から

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