長野市内に、「じょんのび」(新潟方言で[気分ののんびりゆったりしたさまや、ゆったりした気分]の意)という名前の居酒屋さんがあります。
新潟県上越出身のご主人が営むお店は、明るい雰囲気で、おいしい肴と新潟の地酒をいただくことができます。のんびりとくつろげる店内は、まさに「じょんのび」の名にふさわしいものです。しめの「長岡ラーメン」も、新潟の気分を盛り上げてくれます。
ところで、信州になぜ新潟の方言が?と思われるかもしれません。が、もともと上越地域と交流の深い長野県の北部(北信地方)では、新潟とほぼ同じように「じょんのび」を使う地域(とくに飯山以北)もあり、なじみやすい表現でもあるのです。
2004年には、JR飯山線(長野市内と新潟県の越後川口を結ぶ)を、「快速飯山線じょんのび風っ子号」が走りました(長野駅~十日町駅間)。また、現在はなくなってしまいましたが、飯山市内で「じょんのび祭り」という市民祭が行われていたこともありました。
新刊の『方言と地図』(井上史雄監修 フレーベル館 2009.2)は、「おもわず声に出したくなる47都道府県のじまんの方言」がキャッチフレーズですが、長野県のページに「じょんのびだ(楽だ)」、新潟県のページにも「じょんのび してくんないかい(ゆっくりしてくださいね)」が取り上げられています。
ここで、「じょんのび」の本家・新潟県内に目を向けてみると、事業所にその名を冠する所が数か所見つかります。
新潟市
じょんのび館……食堂の経営
柏崎市
じょんのび村協会……温泉施設の経営
糸魚川市
じょんのび……グループホームなどの名(ハローページより)
そういえばかつて、90年代にはやった大手メーカーによる、いわゆる「ご当地」ビールでも、新潟県限定ビールは、「じょんのび」(キリン)の名で売られていました。また、長岡出身の女優星野知子さんが、地元紙の新潟日報に連載されたエッセイも「じょんのび」を冠したものでしたね。
お隣さんの方言の流入では、松本市に「やっとかめ」(名古屋方言で[お久しぶり]の意)という居酒屋さんがあり、北信の「じょんのび」と好一対です。
ところで、長野県外に「出ていった」方言には、どんな語があるのだろうか、という興味がわいてきます。
(今回は「年齢確認の必要な」例が多く、失礼をいたしました。)