10分でわかるカタカナ語

第40回 メディア

2006年4月5日

どういう意味?

「媒体」のことです。「マスメディア」の略として用いられることもあります。

もう少し詳しく教えて

メディア(media)は英語のミディアム(medium)の複数形メディア(media)からきており、一般に「中間」「媒体」「媒介物」「手法」を表します。英語で「マスコミュニケーションの媒体」の意味であるマスメディア(massmedia)を略してメディアといい、カタカナ語でもマスメディアは新聞・テレビ・ラジオやインターネットなどの情報媒体のことです。また、情報を保存する媒体のこともメディアといいます。

どんな時に登場する言葉?

特に分野を問いませんが、情報関連分野や人文社会系領域で多くみられます。「メディアコンプレックス」「メディアスクラム」「メディアミックス」「メディアリテラシー」「メディアアート」などのように、社会のIT化が進むにつれて新しいカタカナ熟語が生まれ、日に日に広まっています。

どんな経緯でこの語を使うように?

カタカナ語のメディアはマスメディアと同義語として使われ、「報道機関」や「新聞社やTV局など」といった意味合いで用いられていました。コンピューター時代に入り、データを保存する外部記憶装置をメディアと呼び習わすことが広まってから、一般に「媒体」の意味で用いられるようになりました。

メディアの使い方を実例で教えて!

メディアコンプレックス(media complex)

メディアコンプレックスは比較的新しい店舗形態で、書籍・CD・DVDの販売およびレンタルを総合的に提供する店をさします。紙メディアを扱う書店、電子メディアを扱うCD・DVDショップが独立併存できる都市部ではなく、駐車場を備えた郊外の店舗から発展しました。1 か所で、書籍・雑誌などの紙メディアもCD・ビデオテープ・DVDといった電子メディアも情報媒体なんでもOK、紙メディアを中心とした販売エリアと電子メディアのレンタル中心エリアに分かれています。店舗によっては中古売買を扱うところもあるようです。この形態は今日では都市部にも進出しています。ちなみに、コンプレックスは「複合体」の意。

メディアスクラム(media scrum)

報道の自由・言論の自由を楯に行われる、行き過ぎた取材による被害のことをメディアスクラムといいます。「集団的加熱取材」「報道被害」と訳します。また、マスメディアがもつ社会への影響力のことをメディアクラシー(mediacracy)といいます。

メディアミックス(media mix)

メディアミックスはもともと舞台芸術でフィルムやスライドなどを併用する表現手法のことで、その際使われる媒体はミクストメディア(mixed media)といいました。そうしたイベント手法が珍しくなくなった今日、メディアミックスは「TVなどの放送、インターネット、雑誌や新聞などの紙媒体など複数のメディアを通して同時に行う宣伝活動」、または広義に「現代社会の複合的なメディア状況」をさすようになりました。

メディアラボ(Media Lab)

アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディア研究所をさします。AI(人工知能)、インターフェース、メディアなどの先駆研究を行なっています。
//www.media.mit.edu/

クイズ

マルチメディア(multimedia)は、音・光・文字などさまざまなデジタルデータ(電子情報)を駆使して表現された「複合媒体」のことです。メディアプレーヤー(media player)は、コンピューターで音声や動画を再生するアプリケーションソフトウエアの総称です。メディアリテラシー(media literacy)は、「情報媒体を分析・活用する能力」をいいます。ひとが最も必要とするものはどれでしょう?

言い換えたい場合は?

メディアを漢字で表すと「媒体」が最も一般的でしょう。カタカナ熟語は、インフォメーションメディアは「情報媒体」、ストレージメディアは「記憶媒体」、ニューメディアは光通信やCATVなど新しい情報伝達手段の総称ですから「新伝達媒体」のように言い換えられます。ちなみにニューメディアは、ふつうはニューテクノロジーズ(new technologies)つまり「新科学技術」と英語では表現されます。メディアアート、メディアリテラシーなどは、「多重媒体美術」「情報分析活用能力」のように無理に漢字に当てはめるより、注釈や説明文で補う方が解りやすいかもしれません。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

メディア・ミディアム・メジアン メディアの単数形はミディアム(medium)です。ミディアムといえばミディアムボディの赤ワイン、とくればステーキの焼き具合…にも使いますが、一般に「中くらい」という意味です。中間性のもの、間にあって伝達・媒介するもの、ということで「媒体」「仲介者」「霊媒」などもさし、MサイズのMは「ミディアム」からきています。統計で用いる中央値メディアンまたはメジアン(median)も語源を同じくする言葉です。

「メディアジャック」は「貸切広告」 「メディアジャック」という言い方は日本独自のカタカナ表現で、電車の中吊り広告がすべて1社で独占されているような宣伝活動をいいます。

はるかなるメディア王国 メディアは、紀元前8世紀末、現在のイラン北西部に実在した古代王国です。首都はエクバタナ(Ecbatana)で、今日ではイラン西部のハマダーン(Hamadan)として知られています。新バビロニアとともにアッシリアを滅ぼし、イラン全土にわたる領土を得、約300年にわたって栄えましたが、紀元前550年頃にアケメネス朝ペルシャに滅ぼされました。この古代王国の住人であるメディア人をメディアン(Median)と呼びます。一方、メディア産業王国で飛び回る「記者」や「通信員」は、メディアンではなく、メディアパーソン(mediaperson)とかメディアマン(mediaman)と呼ばれています。

王女「メディア」 ギリシャ神話に登場するコルキスの王女メディア(Mēdeia)。日本語では「メデイア」とも表されます。神話に基づいてエウリピデスが著した傑作悲劇のタイトルロールとしても有名。映画ではイタリアのパゾリーニ監督の「王女メディア」(“Medea”)1970年が有名です。また、日本の演出家・蜷川幸雄による「王女メディア」はタイトルロールに平幹二朗を配し、1983年、アテネのパルテノン神殿の膝元にあるヘロディアティコス音楽堂で上演され絶讃を博しました。このように、この古典作品は各国語に翻訳され、舞台化・映画化されて新たな傑作を生み、さらにDVDなどでメディア化されています。

筆者プロフィール

三省堂編修所

編集部から

あなたはマスコミ報道や日常会話の中で、突然意味の分からないカタカナ語に出会い、困ってしまったことはありませんか?

「そもそもソリューションとは何なのか?」「どういう意味なのか?」「どういう時に使うのか?」「分かり易く言い換えるにはどうしたらいいか?」といった素朴な疑問は、いまさらヒトには聞けない疑問のひとつではないでしょうか?

そこでこのコーナーでは、社会での使用頻度が高いわりに意味がよく知られていないカタカナ語を選び出し、それらの意味や使い方について「10分でわかる」ようまとめてみました。このコーナーを見れば、あなたもカタカナ語が怖くなくなります。