どういう意味?
一般には「紙ばさみ」「個人の作品集」を、金融では「資産構成」「有価証券明細表」をさします。
もう少し詳しく教えて
ポートフォリオ(portfolio)は「紙ばさみ」を意味する英語からきています。「持ち運びができるように書類を入れるもの」をさし、一般には「書類カバン」「携帯用書類入れ」「折りカバン」などをいいます。また、「画家・写真家・デザイナーなどが自分の作品を整理してまとめたもの」「モデルなどが売り込み用の自分の写真を入れるもの」もポートフォリオといいます。経済・金融分野では、もともと株式用語で「有価証券一覧表」をさしますが、「資産一覧表」「顧客リスト」などの意味でも用いられます。さらに教育分野ではポートフォリオ評価法で使うファイルをさすこともあります。
どんな時に登場する言葉?
日本で多く使われるのは、金融・経済分野です。投資・資産運営・資産管理など財テク関連ではよく登場します。投資家や企業などが個々に保有している株式や債券などを総括して、ポートフォリオと呼びます。また、「個人の作品集」の意味合いから、就職や教育分野でも「自分を表現するための資料一切合切」をポートフォリオと呼ぶことがあります。文房具店では、紙ばさみ・書類カバン・折りカバンなど「書類入れ」の類が見つかるでしょう。公官庁なら公的書類入れをさすかもしれません。
どんな経緯でこの語を使うように?
もともとは「紙ばさみ」のことです。画家や写真家が自分の作品を持ち歩くとき紙ばさみに入れたことから「個人の画集や作品集」を表すようになり、さらにモデルが「自分のセールスポイントや仕事の経歴を示すような写真や切り抜きなど纏(まと)めたもの」をいうようになり、プレゼンテーション流行りの今日では前述のように「自分をアピールするための経歴資料」といったものまでさすようです。また、株式では「有価証券一覧表」をポートフォリオと呼びますが、1970年代には「モダンポートフォリオ理論」というリスク管理を数値計算で分析する投資理論ができあがり、分散投資を計算するソフトウエアも開発されて実践的に金融分野で使われるようになり、財テクブームに乗って日本でもよく使われるようになりました。
ポートフォリオの使い方を実例で教えて!
ポートフォリオを使った金融用語
有価証券を紙ばさみに入れて保管・携帯したところから、有価証券一覧表もポートフォリオと呼ばれ、さらに「資産構成」をさすようになりました。熟語としては、ポートフォリオ理論と呼ばれることも多いモダンポートフォリオ理論や、安定した資産運用を行う手法であるポートフォリオインシュアランス(portfolio insurance)、資産運用の際に「安全性と高収益性を可能な限り両立させるように組み合わせる分散投資」をさすポートフォリオセレクション(portfolio selection)、有価証券買付による間接投資を意味するポートフォリオインベストメント(portfolio investment)、資産を積極的に運用するアグレッシブポートフォリオ(aggressive portfolio)、株式市場にあげられた全銘柄を時価総額の構成比率で購入したマーケットポートフォリオ(market portfolio)など。
アーティストやクリエーターのポートフォリオ
個人の作品集ですが、一般的な出版物ではありません。作品を保管し、目的や意図に応じて選択していったもので、編集者や美術館学芸員、プロデューサーなどに見せて作品への理解を促すために作られます。
ファッションモデルのポートフォリオ
ポートフォリオとコンポジットカードは、プロのモデルの必需品で、自分を売り込むのに欠かせないものです。コンポジットカードはモデル名と顔写真、連絡先、サイズなどが書かれたカードで、ポートフォリオは前述のような写真をいいます。仕事で撮影されたものはもちろん、白黒・カラー、屋内・屋外など組み合わせて10枚程度が一般的なようです。クライアントはポートフォリオを見て、そのモデルを起用するかどうか決めるわけです。自分をアピールするプレゼンテーションとしてのポートフォリオという考え方の先駆けといっていいでしょう。
ポートフォリオ評価法
ポートフォリオ評価法は総合的な学習評価法として、ロンドン大学のS=クラーク教授を中心に考案され、1980年代後半にイギリスやアメリカで取り入れられ、1990年代後半に日本に入ってきました。従来の科目テストや知力テストで測定できない個人能力の質的評価方法とされています。学習過程で生徒が作成したさまざまなものを収集し系統的に選択し、教師とともに生徒自身も自己評価を行い、ステップアップしていくというもの。教育分野で単にポートフォリオといったとき、ここで使われる収集物をさす場合と、「ポートフォリオ評価法」「ポートフォリオ学習」「ポートフォリオ教授法」「ポートフォリオ評価」などをいう場合があるので注意が必要です。
トレカ用ポートフォリオ
文房具のカード収納用品の一種ともいえるポートフォリオ。トレーディングカード用のものは1ページ9枚または4枚収納でき、コレクターの一部はトレード用のカードを入れたポートフォリオを持ち歩いているそうです。同好の士に出会えば、どこでもトレカ?
言い換えたい場合は?
ポートフォリオを漢字で表現する場合、金融関係なら、「資産構成」「財産目録」「投資配分」「有価証券」「有価証券一覧表」などが考えられます。熟語ではポートフォリオインベストメントは「間接投資」「証券投資」、ポートフォリオセレクションは「資産選択(理論)」といった訳語が当てはめられます。個人のプロフィールに関する場面では、「作品集」のほか、「個人経歴資料」「学習経過資料」などもあり得るでしょう。一般的には「紙ばさみ」「書類カバン」などです。
雑学・うんちく・トリビアを教えて!
ファイルとポートフォリオはどこが違う? ポートフォリオの語源は、「一葉を運ぶ」もの。機能はファイルやバインダーとほとんど同じように見えます。ファイル(file)の語源は「書類を糸などで綴じる」、ラテン語で「糸」「ひも」を意味するフィラム(fīlum)まで遡ることができます。つまり、どちらかというと、ファイルは綴じて保管する紙入れで、ポートフォリオは入替自由な紙ばさみでしょう。日本ではあまり厳密に区別されていませんが、イメージ的にはポートフォリオは、画像資料が連想され、途中経過資料といった感じを受けます。
モダンポートフォリオ理論の始祖 モダンポートフォリオ理論のはじまりは、経済学者H=マルコビッツ(Harry Markowitz)が1952年に発表した分散投資の数学的モデルを示した論文といわれています。複雑な計算を必要とするモデルですが、コンピューターの発達によって、広く用いられるようになりました。マルコビッツは1927年に生まれ、1990年のノーベル経済学賞を受賞しました。
ポートフォリオの理解度 国立国語研究所の「『外来語』言い換え提案」によると、「ポートフォリオ」は「資産構成」「作品集」「投資配分」とされています。また、2004年掲載の情報によると、「ポートフォリオ」の理解度は国民全体の25%未満です。