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間投詞damn,hell―『英語談話表現辞典』覚え書き(13)―

2010年 1月 21日 木曜日 筆者: 内田 聖二

前回はいらだち・狼狽した気持ちなどを典型的に表現する間投詞としてのJesusとChristを概説しました。今回は同じような気持ちを強く表すdamnとhellに焦点を合わせてみます。

Damnには動詞、名詞、形容詞の用法があり、たとえば、形容詞としてはDamn weather!(いやな天気だ!)のようにも用いられ、ここでもいらだった気持ちを伝えることができます。動詞としての用法から Damn! のように一語で、あるいは Damn it! のような目的語itを伴った形で間投詞的に使われ、怒り・非難・不満の気持ちを表します。命令文のようにみえますが、(May) God damn it.(神の罰がありますように)という祈願文が起源です。本辞典では Damn it! を見出し語として次のように説明しています。

1 〈相手の行動に対する怒り・非難・不満を表して〉くそっ, ちくしょう, いまいましい, 何てことだ:/“I broke some cups.” “Damn it! I always tell you not to touch them!” 「コーヒーカップを割ってしまった」「なんてこった! 触るなっていつも言ってるのに」.

2 〈自分の力の及ばないことに対する怒り・非難・不満を表して〉くそっ, ちくしょう, 何てことだ:《交通渋滞に巻き込まれて》Damn it! I should have left earlier. なんてこった, もっと早く出発すればよかった.

3 〈自分の行動に対するいらだちを表して〉くそっ, ちくしょう, しまった:Damn it! I spilled my coffee! しまった, コーヒーをこぼしちゃった! /.

4 〈自分が所有する物の不具合などに対するいらだちを表して〉くそっ, ちくしょう:Damn it, my watch has stopped! くそっ, 時計が止まっちまってる! /

もともと「地獄」を表すhellはheaven(天国)に対する語です。heavenもGood heavensのように間投詞としての用法がありますが、hellのほうが圧倒的に多くみられます。また、Good heavens はどちらかというとやわらかい響きがありますが、hellは日本語の「ちくしょう!」に相当する男性的なはげしいことばです。いらついた感情表現のきっかけになるのは相手のことばがおもですが、自分の発言中にもそのような感情におちいることもあります。本辞典では立項していませんが、次のように記述してみました。用例は三省堂コーパスを改変したものです。

1 〈相手の発言・行為にいらだって〉何だって、くそくらえ、ちくしょう:“Million dollars and the house is yours!” “Hell, you can practically buy the whole area for that!”「百万ドルでこの家はあなたのものです」「くそくらえだ、それだけあればこのあたり全部買えるじゃないか」

2 〈自分の発言中にいらだちをおぼえて〉くそっ、何と言っても、まったくもう:《解雇を言い渡して》“You better get outta here.” “I’m goin’! Hell, you couldn’t pay me to stay.”「出て行ってくれ」「出て行くよ。くそっ、いても給料も払えないくせに」/ Well, why didn’t you come to my party? Hell, everyone else came! どうしてパーティに来てくれなかったんだ?ったくもう、ほかはみんな来てくれたんだぜ。

また、強い感情表現ということから応答のyes/noを強める用法もあります。

3 〈疑問文の答えyes/noを強調して〉もちろん、とんでもない:“Is this your car?” “Hell, no, it belongs to my sister.”「この車、君のか?」「とんでもない、姉のだよ」/ “Are you hungry?” “Hell yeah. I’m starving.”「おなかへってる?」「もちろんだよ、ぺこぺこだ」

なお、賛意を含意する感情表現としても用いられます。

4 〈賛意を表して〉わーお、まったく、よし:“What shall we do? Soccer?” “Well, it looks like rain. Playing TV games?” “Hell, that’s a good idea.”「なにしよう、サッカーは?」「雨降ってくるよ。テレビゲームは?」「よーし、それにしよう」


【筆者プロフィール】
内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)


【編集部から】
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2010年 1月 21日