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耳の文化と目の文化(31)―地名の表記(5)―

2011年 10月 24日 月曜日 筆者: 新田 春夫

クラウン独和辞典―編集こぼれ話―(118)

cで表記される地名は、これまで見てきたように、ラテン語に由来するものであればむしろcによる表記を近世以降にkに改めたものが多い。しかし、それでもなおcによる表記を保持しているものがある。それらはむしろ由来のわからなくなっている地名が多いようである。それは、まだ正書法の定まっていない時代に、cによる表記が目立つことから差異化などのために使われたものがそのまま受け継がれていると考えられる。また、人名などに由来するものであればその表記がそのまま受け継がれているようである。

ニーダーザクセン州のエルベ川の河口にCuxhavenクックスハーフェンという港町がある。havenは「港」であるが、cuxは低地ドイツ語の「堤防で囲んだ土地、干拓地」を意味するkoogに由来する。中世の表記にKuckeshaven、近世の表記にKoogshavenとあるから本来はcではなかったことになる。

バイエルン州の北部に位置するCoburgコーブルクは1530年にアウグスブルク帝国議会に出席できなかったルターが待機していた都市として知られている。burgは「城」を意味するのであろうが、coの語源は不明である。中世にはChoburc, Chonburchという表記もあり、一貫してc, chが使われている。

ブランデンブルク州のシュプレー河畔にあるCottbusコトブスは今日でもなおスラブ系のソルブ人が住んでいる。地名の語源はソルブ語の人名に由来すると考えられている。中世ではKottbuzと表記されることもあった。

ニーダーザクセン州のハルツ山の近くに鉱山都市として栄えたClausthalクラウスタールという都市がある。ここはノンアルコールビールの醸造所があったところとしても有名である。この地名は人名Nikolausニコラウス、Clausクラウスに関係があると思われる。Klausthalと表記されたこともあった。

【筆者プロフィール】

新田 春夫(にった・はるお)
武蔵大学教授
『クラウン独和辞典第4版』編集委員

【編集部から】

2008年2月に『クラウン独和辞典』(第4版)が刊行されました。日本初、「新正書法」を本格的に取り入れた独和辞典です。編修委員の先生方に、ドイツ語学習やこの辞典に関するさまざまなエピソードを綴っていただきます。

2011年 10月 24日