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タイプライターからコンピュータへ:QWERTY配列の変遷100年間(2)

2015年 7月 9日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

タイプライターに魅せられた男たち・特別編第2回

QWERTY配列の変遷100年間(1)からつづく)

1872年7月、ローデブッシュ(Clinton DeWitt Roudebush)のショールームに飾られていたタイプライターは、42キーの最新鋭機でした。最上段の数字とハイフンは左に1文字移動しており、その右にコンマとアポストロフィが配置されていました。Wの左に追加されたキーには、Qが移動していました。Zの左には&が追加され、Nが最下段の真ん中へと移動していました。

1872年7月時点のキー配列(『Scientific American』1872年8月10日号)

1872年7月時点のキー配列(『Scientific American』1872年8月10日号)

1873年9月、クロー(Jefferson Moody Clough)とジェンヌ(William McKendree Jenne)は、「Sholes & Glidden Type-Writer」の試作機を完成していました。キー数は44に増やされていて、上段の右端にはコロンが、中段の左端には「パラグラフ・セパレータ」と呼ばれる電信特有の記号が、それぞれ追加されていました。また、ピリオドやアポストロフィは下段の右下に集められていて、代わりにRとPが上段に移動していました。さらに、Iの右横にOを移すことで、数字の1と0(および9と0)が隣りあうようになっており、そのあおりでYが右の方へと移動させられてしまいました。

1873年9月時点のキー配列(U.S. Patent No. 199263)

1873年9月時点のキー配列(U.S. Patent No. 199263)

1874年4月、E・レミントン&サンズ社は「Sholes & Glidden Type-Writer」の1号機をリリースしましたが、そこではYが真ん中に戻されていました。ショールズがYを戻すよう主張したもので、実際、ショールズは、このキー配列を含む特許を取得しています(U.S. Patent No. 207559)。ただし、この変更の結果、Iと8が離れてしまい、IやOがここに配置された当初の意図がわからなくなってしまいました。また、このキー配列では、上段の文字だけでTYPEWRITERが綴れるようになっていますが、「Sholes & Glidden Type-Writer」というブランド名を考えると、ハイフンが同じ段になければ意味がないので、これは単なる偶然だと考えられます。

1874年4月時点のキー配列(U.S. Patent No. 207559)

1874年4月時点のキー配列(U.S. Patent No. 207559)

QWERTY配列の変遷100年間(3)に続く)

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://slashdot.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。

編集部から

近代文明の進歩に大きな影響を与えた工業製品であるタイプライター。その改良の歴史をひもとく連載です。毎週木曜日の掲載です。とりあげる人物が女性の場合、タイトルは「タイプライターに魅せられた女たち」となります。

2015年 7月 9日