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続 10分でわかるカタカナ語 第20回 ディスクロージャー

2017年 7月 22日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「ディスクロージャー」の意味と使い方

どういう意味?

 「情報の開示」という意味です。

もう少し詳しく教えて

 ディスクロージャー(disclosure)とは、もともと英語で「情報の開示」を意味します。

 disclosure は、dis-(打ち消し)と close(「閉じる」)が結びついた動詞 disclose がもとになっています。したがって disclosure とは「閉じないこと」、ひいては「情報を隠さないこと」を意味するわけです。以上の意味はカタカナ語のディスクロージャーにも引き継がれています。

 なお一部ではディスクロージャーを「ディスクロ」と省略して呼ぶこともあるようです(例:ディスクロ誌など)。

どんな時に登場する言葉?

 多くの場合、ディスクロージャーは「企業による経営内容の公開」を意味します。したがってこの言葉は経営分野でよく登場します。また行政による情報公開のこともディスクロージャーと言います。さらにコンピューターの分野でも脆弱(ぜいじゃく)性情報の公開のことをディスクロージャーと呼びます。

どんな経緯でこの語を使うように?

 日本でディスクロージャーという言葉や概念が本格的に注目されたのは1990年代後半のことでした。バブル経済崩壊後の金融市場で「金融ビッグバン」と呼ばれる制度改革が進んだことが背景にあります。これは日本の金融市場を、自由で公正で国際的な市場に変革するための取り組みでした。このうち公正化(利害関係者の保護)を実現するための取り組みとして、ディスクロージャー制度、つまり企業による情報公開制度が拡充されたのです。

ディスクロージャーの使い方を実例で教えて!

「ディスクロージャーの充実」

 ディスクロージャーという言葉を使って、次のような言い方ができます。「ディスクロージャーの充実」「ディスクロージャーの強化」「ディスクロージャーの徹底」「ディスクロージャーを行う」など。いずれも「ディスクロージャー」を「情報開示」に置き換えても意味が通じるところに注目してください。

「ディスクロージャー誌」

 銀行・信用金庫などの金融機関は「ディスクロージャー誌(ディスクロ誌)」と呼ばれる資料を半期ごとに公開しなければなりません。その金融機関における最新の「財務状況や業務内容」を公開する必要があるのです。

 これは銀行法や信用金庫法などの規定に基づいており、「預金者が自己責任で健全な取引先を選べるようにする」ことを目的にしています。ディスクロージャー誌は銀行の本支店に冊子として置いてあるほか、ウェブサイトでも閲覧が可能です。

企業の「ディスクロージャー」

 ディスクロージャーが関係するのは金融機関だけではありません。あらゆる企業における情報公開のこともディスクロージャーと言います。企業のステークホルダー、すなわち利害関係者(株主や取引先など)を保護するため、企業は経営に関する情報を適宜開示しなければなりません。

 企業のディスクロージャーには、大きく分けて「法定開示」「適時開示」「任意開示」という3つの種類があります。このうち法定開示とは、会社法や金融商品取引法(旧証券取引法)に基づく情報開示のこと。また適時開示(タイムリーディスクロージャー)とは、証券取引所の規定により「株価に重要な影響を与える情報」をその都度開示することを意味します。インサイダー取引(=未公開の重要情報を持つ人物による不公正な証券取引)を防ぐことが目的です。さらに任意開示とは、IR(投資家向け広報)・PR(広報)といった方法による自主的な情報開示をさします。

 近年では環境報告書、CSR 報告書などを自主的に公開する企業も増えています。社会が企業に対して開示を求める情報の種類は、多様化する傾向があるようです。

脆弱性の公開

 コンピューターセキュリティー(=コンピューターの安全性を維持する活動)の分野では、ある情報システムで脆弱性(=安全を脅かす弱点)が発見された際、その情報を公開することをディスクロージャーと呼んでいます。また脆弱性の情報を「即時かつ完全に」公開することをフルディスクロージャーとも呼びます。

言い換えたい場合は?

 単純に言い換える場合は「開示」「公開」「公表」「発表」などの言葉を試してください。また「情報開示」「情報公開」のように「情報」という表現を付け加える方法もあります。

 定まった代替表現を使う方法もあります。例えば、企業のディスクロージャーは「企業情報開示」、行政のディスクロージャーは「情報公開」、タイムリーディスクロージャーは「適時開示」と表現できます。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

未確認飛行物体 UFO(未確認飛行物体)や地球外生命体などの存在を信じている人たちの中には、政府などの公的機関に対して「機密情報」を開示させる活動を行っている人もいます。このような活動でもディスクロージャーという言葉が登場します。

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◆以前の連載は⇒「10分でわかるカタカナ語」へ

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【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

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【編集部から】

 「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。
 「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。
 これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。
 毎週土曜日更新。

【関連書籍】

●『コンサイスカタカナ語辞典 第4版』
定評あるカタカナ語辞典の第4版。約56,300語収録。詳細は こちら

●『見やすいカタカナ新語辞典』
大きく見やすい活字でカタカナ新語が引ける。約13,000語収録。詳細は こちら

続 10分でわかるカタカナ語 第19回 ダイバーシティー

2017年 7月 15日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「ダイバーシティー」の意味と使い方

どういう意味?

 「(人間の)多様性」という意味です。「ダイバーシティ」とも言います。

もう少し詳しく教えて

 ダイバーシティー(diversity)はもと英語で、「多様性」を意味します。

 英語の diversity のニュアンスは、類義語である variety(バラエティー)と比較することで理解できます。そもそも diversity も variety も「多様性」を意味しますが、variety は「同じ種類の中での違い」を強調する傾向があり、diversity は「そもそも種類が違うこと」を強調する傾向があるのです。カタカナ語のダイバーシティーも、そのニュアンスを引き継いでいます。

 さてダイバーシティーという言葉は「人間の多様性」を表現する場面でよく登場します。具体的には性別・年齢・国籍・人種・宗教・性的指向・障害の有無などの多様性のことを指すのです。これは後述する「ダイバーシティーマネージメント(diversity management)」に関連しています。

どんな時に登場する言葉?

 経営分野で頻出する言葉です。この分野で近年、「ダイバーシティーマネージメント」という新概念が注目されているからです。「多様な人材を活用する経営」をさす概念です。

 このほか無線通信の分野にも「ダイバーシティー(diversity)」と呼ばれる技術手法があります。

どんな経緯でこの語を使うように?

 もともと1960年代の米国で誕生したダイバーシティーマネージメントという概念が日本でも注目されるようになったのは2000年代以降のことです。2002年に当時の日経連(後の経団連)が『原点回帰―ダイバーシティ・マネジメントの方向性―』と題する報告書を発表。この報告書がダイバーシティーマネージメントの重要性を主張したことから、ダイバーシティーという言葉の使用も増えていきました。

 無線通信用語のダイバーシティーは、これ以前から、専門用語として使われていたようです。

ダイバーシティーの使い方を実例で教えて!

「ダイバーシティーマネージメント」

 多様な人材を活用する経営(マネージメント)のことです。「ダイバーシティー経営」とも言います。

 ここでいう多様性とは、性別・年齢・国籍・人種・宗教・性的指向・障害の有無などの多様性のことです。したがってダイバーシティーマネージメントとは「性別・年齢・国籍・人種・宗教・性的指向・障害の有無などの多様な従業員を活用する経営手法」を意味するわけです。日本ではとりわけ「女性」人材の活用だけが注目されることも多い概念ですが、それは目標の一部に過ぎません。

 多様な人材の活用は、企業・従業員の双方にとって有益です。まず企業にとっては「国際的なビジネス環境」や「変動の激しいビジネス環境」への対応力が増すメリットがあります。また従業員にとっては、自身の潜在的価値を最大限に活用する働き方が可能になるわけです。

 日本政府もその推進に力を入れており、2012年から経済産業省が「ダイバーシティー経営企業100選」(2015年からは「新ダイバーシティー経営企業100選」)を選定しています。

 ちなみに「ワークライフバランス(work-life balance)」(仕事と生活の両立)という概念も、ダイバーシティーマネージメント(特に女性人材の活用)を実現させる要素として注目された経緯があります。

無線の「ダイバーシティー」

 無線通信分野では「ひとつの無線信号を複数のアンテナで受信したうえで、複数の受信信号をうまく選択・合成することで、信頼性の高い信号を確保する技術」をダイバーシティーと呼んでいます。この分野では慣習的に「ダイバーシチ」ということもあります。またこの技術を用いたアンテナ群を「ダイバーシティーアンテナ(diversity antenna)」といいます。携帯電話の基地局などで一般的に用いられている技術です。

生物多様性

 多様性という言葉を聞いて「生物多様性」のことを思い出した人もいるのではないでしょうか。地球上に多様な種の生物がいること、同じ種の中にも多様な遺伝子があること、さらには多様な生態系があることを意味する言葉です。

 このような多様性は人類にとっても有益な存在。例えば生物工学(バイオテクノロジー)の分野でも、多様性が新しい知見をもたらすことがあるのです。この多様性を保護する目的で「生物多様性条約」(1993年発効)などの国際的な取り組みも進んでいます。

 さて、生物多様性を英語で表現すると biodiversity(「バイオダイバーシティー」)となります。この言葉もダイバーシティーの仲間ということになります。

言い換えたい場合は?

 単純に言い換える場合は「多様性」が使えます。また人の多様性を表現する場合は「人間の多様性」「人材の多様性」などの表現も可能です。もっと詳しく「性別・年齢・国籍・人種・宗教・性的指向・障害の有無などの多様性」というように補足するのも良いでしょう。またダイバーシティーマネージメントは「多様な人材の活用」「多様な人材を活用する経営」「多様性を尊重する経営管理」などと言い換えることが可能です。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

お台場(だいば) 東京都江東区青海(あおみ)に『ダイバーシティ東京』と名付けられた複合商業施設/オフィスビルがあります。この場合のダイバーシティ(DiverCity)は多様性(diversity)と街(city)を組み合わせた造語。施設がある地域の名前「台場(だいば)」にもちなんでいるそうです。

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【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

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続 10分でわかるカタカナ語 第18回 タブレット

2017年 7月 8日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「タブレット」の意味と使い方

どういう意味?

 もともと「小さな板状のもの」の意で、「錠剤」「鉄道の通票」「板状の情報機器」などのことです。

もう少し詳しく教えて

 タブレット(tablet)は英語で本来「小さな板状のもの」を意味します。

 英語では、書字板(文字を書いたり消したりできる板)、銘板(建物や施設などに掲示する板)、錠剤、鉄道の通票(通行許可票)などを表します。近年では板状の入力装置や情報端末(「タブレット端末」)をさす言葉としても使われています。

 以上のうち日本では、「錠剤」「鉄道の通票」「板状の入力装置や情報端末」の意味で使われてきています。

どんな時に登場する言葉?

 医薬品・食品・鉄道・情報通信の分野で登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 大正時代には見られた言葉です。例えばそのころの外来語辞典には「タブレット」の項目がありました。当時のタブレットは、主に「鉄道の通票」「錠剤」「銘板」という意味で使われていたようです。

 いっぽう「情報機器」の意味が広まったのは近年のことです。まず20世紀末にコンピューターへの入力装置であるタブレット(ペンタブレット)が普及。2000年代以降になると1枚の板状のコンピューターが登場し、これをさす語として「タブレット(端末)」が使われるようになりました。

タブレットの使い方を実例で教えて!

医薬品・食品の「タブレット」

 タブレットは、医薬品や栄養補助食品(サプリメント)の分野で「錠剤」、食品の分野で「錠菓」(ラムネ菓子のような食品)をさします。なお『ミンティア』や『フリスク』などの商品名で知られる菓子は「ミントタブレット」と呼ばれます。

 錠剤にせよ錠菓にせよ、その形は「板状」とは言い難いかもしれません。しかしこれらも習慣的にタブレットと呼ばれます。

鉄道の「タブレット」

 鉄道で列車どうしの衝突・追突を防ぐ仕組みのひとつに「閉塞(へいそく)」があります。これは線路を区間に区切って「各々の区間にはひとつの列車しか進入してはいけない」というルールをさします。

 現代の鉄道では多くの場合、人手を介さない「自動閉塞」を用いています。しかしかつてはこの作業を人力で行った時代もありました。そのときに用いていた道具がタブレットと呼ばれる通票です。これは、列車に対して発行される通行手形のようなもの。実際にはコースター(コップ敷き)程度の大きさの「金属製の円盤」を用いていました。列車の運転手は、停車駅で次の区間専用の円盤を受け取ることで、初めてそこから先の区間を走行できるようになります。

入力装置の「タブレット」

 コンピューター用語の「タブレット」は、まず20世紀中に「ペンタブレット(pen tablet)」の略称として普及しました。ペンタブレットとは、平面板とペン状の棒で構成されている入力装置のこと。パソコンでイラストを描く時によく使われます。利用者の間では「ペンタブ」という略称も普及しました。

情報端末の「タブレット」

 2000年代に入ると、コンピューターの一形態としての意味も加わるようになりました。平らな板のような形で、パソコンに近い機能を備えた機器のことです。

 まず2002年にマイクロソフトが「タブレットPC(Tablet PC)」と呼ぶ概念を発表。板のような形状で、タッチパネルやペンによる操作が可能なパソコンでした(キーボード付きの端末も、そうでない端末も存在した)。つづいてアップルが2010年にiPad(アイパッド)を発表。これ以後、このようなコンピューターが「タブレット端末」と総称されるようになりました。なおタブレット端末やスマートフォンなどの情報機器は、スマートデバイス(→スマート)と総称されます。

言い換えたい場合は?

 医薬品・栄養補助食品のタブレットには「錠剤」、菓子のタブレットには「錠菓」や「タブレット菓子」という定訳があります。また鉄道のタブレットは、厳密さを求められない場面なら「通票」という定訳を使えます。

 入力装置のタブレットには定訳がありません。「平面板とペンで構成される入力装置」などの補足を試してください。また情報端末のタブレットについては、一部マスコミが「多機能情報端末」という補足表現を使っています。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

「タ」ブレットではなく「ダ」ブレット 『不思議の国のアリス』の作者であるルイス・キャロルが遺した言葉遊びに「ことばのはしご(word ladders)」があります。例えば「cold(冷たい)を warm(暖かい)にせよ」というお題を与えられると、cold → cord(コード)→ card(カード)→ ward(病室)→ warm といった具合に1文字ずつ変えてゆき別の単語に変形させる遊びです。
日本では一部で「タブレット」の名称でも知られている遊びですが、ルイス・キャロルはこの遊びを「ダブレット(Doublets)」と呼んでいました。ダブレットという命名には「お題となる対(ダブル)の言葉」という意味が隠されています。

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続 10分でわかるカタカナ語 第17回 タスク

2017年 7月 1日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「タスク」の意味と使い方

どういう意味?

 「やるべき作業」という意味です。

もう少し詳しく教えて

 タスク(task)はもともと英語で、「やるべき作業」を意味します。

 この言葉のニュアンスは、類義語と比べることで理解できます。「作業」を意味するカタカナ語には、「ワーク(work)」「ジョブ(job)」「タスク」などがあります。このうちワークは「作業一般」を表す概念(英語では不可算名詞の扱い)。いっぽうジョブやタスクは「具体的なやるべき作業」をさします(英語では可算名詞の扱い)。このうちタスクに限り「課せられたもの」「困難なもの」というニュアンスが伴う場合があります。

どんな時に登場する言葉?

 作業や仕事にかかわる場面で登場する言葉です。またコンピューターの分野では「処理の実行単位」という意味でタスクという言葉が登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 大正時代に出版された外来語辞典に掲載されている例もありますが、一般に広まったのは1990年代後半以降のことでした。まずコンピューター用語として使用が広がり、その後、一般的な「作業」の意味でも使われるようになりました。

タスクの使い方を実例で教えて!

タスクを使った表現のいろいろ

 次のような表現が可能です。「タスクを始める」「タスクを開始する」「タスクを実行する」「タスクをこなす」「タスクに集中する」「タスクを中断する」「タスクをやめる」「タスクを終える」「タスクを終了する」「タスクを繰り返す」。いずれの場合も「タスク」を「作業」に置き換え可能である点に注目してください。

「タスク管理」

 ビジネスマンの中には、自身がこれから行うべき作業・行動を一覧表にまとめて管理する人もいます。これを「タスク管理」と呼びます。近年ではスマートフォンなどで「タスク管理アプリ」や「タスク管理ツール」を活用する人も増えているようです。

コンピューターの「タスク」

 コンピューターの分野では「処理の実行単位」をタスクと呼んでいます。しかしながらこの用語は、同じコンピューターの分野でも、技術分野やシステムによって定義が異なる場合やそもそも定義があいまいな場合があるので注意が必要です。

 複合語もあります。例えばコンピューター分野での「タスク管理」とは「タスクの実行を制御するための機能」のこと。また「マルチタスク(multi task)」とは「複数のタスクを並行して実行する仕組み」をさします。

 お使いのパソコンの基本ソフトが『ウィンドウズ』シリーズである場合は「タスクバー」「タスクトレイ」「タスクマネージャー」などの用語に馴染みがあるかもしれません。ここでいうタスクとは、おおむね「実行中のプログラム」のことをさします。

 なお「タスクを実行する」「タスクを中断する」「タスクを終了する」などの表現は、コンピューターの分野でもそのまま利用できます。これらに加えて「タスクを起動する」「タスクを生成する」「タスクを切り替える」など、この分野に固有の表現も存在します。

「タスクフォース」

 「特別な目的のため臨時に編成するチーム」をタスクフォース(task force)と呼びます。TF と略す場合もあります。

 本来は軍隊用語のひとつ。特別任務を遂行するために、通常の組織とは別に編成する「特別部隊」や「機動部隊」を指します。部隊を意味する「フォース」という語を含むのはこのためです。

 転じてビジネスや行政などの分野でも「特別作業班」のことをタスクフォースと呼ぶようになりました。例えば日本政府は2009年に「JAL(日本航空)再生タスクフォース」を、また2010年に「自殺対策タスクフォース」を設置しています。いずれも「緊急かつ困難な課題(企業再生や自殺対策)を解決するために臨時で編成される少人数の組織」をさしています。「タスクチーム」と言う場合もあります。

言い換えたい場合は?

 基本的には「作業」「仕事」「処理」「課題」「行動」などの言葉で言い換え可能です。例えばビジネスの文脈で登場する「タスク管理」は「作業管理」「行動管理」と言い換えることができます。

 コンピューター分野のタスクは、無理に言い換えをしないほうが無難です。言及しようとする分野でタスクがどのように定義されているのか(いないのか)を確認したうえで、「処理の実行単位」「実行中のプログラム」などの補足を適切に行うのがよいでしょう。

 タスクフォースは、軍事的文脈では「特別部隊」、一般的文脈では「緊急対応チーム」などと言い換えることが可能です。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

タスクの理解率 国立国語研究所が2006年にまとめた『「外来語」言い換え提案』によれば、タスクの意味を理解する人は「全世代」「60歳以上」のいずれも25%未満でした。適切な言い換えや認知率の向上が求められるカタカナ語のひとつといえるでしょう。

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続 10分でわかるカタカナ語 第16回 サステナブル

2017年 6月 24日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「サステナブル」の意味と使い方

どういう意味?

 「(環境・社会・経済の面で負荷が少なく)持続可能な」ということです。「サステイナブル」「サスティナブル」とも書きます。

もう少し詳しく教えて

 サステナブル(sustainable)はもともと英語で、「持続可能な」という意味です。

 この「持続可能な」とは「そのやり方が将来も継続できる」ことを意味します。多く、環境を中心とする分野において言われます。例えば「サステナブルな社会」と言った場合、それは「将来にわたって持続可能な社会」のことをさします。より具体的に言うと「環境を保護して資源も浪費しないことにより、将来世代も現役世代と同じように発展の恩恵を受けながら暮らせる社会」のことです。

どんな時に登場する言葉?

 環境問題などの「社会的課題」を語る際に、よく登場する言葉です。ここでいう社会的課題には、環境・資源・エネルギー・貧困・教育・人権などの課題が含まれます。

 例えば資源の分野では「サステナブルな水産資源の管理(=水産物の乱獲をやめること)が必要」などの文が登場します。また人権の分野では「工場をサステナブルに運営するため、劣悪な労働条件を見直した(=低賃金や過剰労働などを排した)」のような言い方も登場します。

 いっぽう経営分野で限定的に登場するサステナブルも存在します。例えば「サステナブル成長率」(持続可能成長率=内部投資のみで実現できる成長の比率:企業価値を評価する指標のひとつ)のように、会社の継続可能性について言う場合がこれに当たります。

どんな経緯でこの語を使うように?

 サステナブルという言葉が注目されたきっかけは「持続可能な開発(sustainable development)」という概念にありました。これは「『持続可能性』と『開発』は両立できる」という考え方、つまり「『環境保全』と『社会の発展』は両立できる」という考え方をさします。もっと言えば「『将来世代』と『現役世代』の利益は両立できる」とも言っているわけです。

 この概念が提唱されたのは1987年のことでした。国連の「環境と開発に関する世界委員会(通称、ブルントラント委員会)」が本概念を中核に据える提言を行ったのです。以後サステナブルという言葉は「環境」や「社会的課題」と深く結びつけて使われています。

 なお日本の新聞記事(注:毎日・朝日・産経・読売調べ)で、サステナブルの登場頻度が増えたのはゼロ年代(2000年〜09年)以降のことです。

サステナブルの使い方を実例で教えて!

サステナブルな社会

 持続可能性が求められる物事について「サステナブルな社会」「サステナブルなライフスタイル」などのように表現できます。

サステナブルケミストリー

 サステナブルを含む複合語もあります。例えばサステナブルケミストリー(sustainable chemistry)とは「持続可能な社会づくりに貢献する化学」のこと。環境保護に役立つあらゆる化学的手法(廃棄物・二酸化炭素排出の抑制、省エネ、エネルギーの効率化、自然エネルギーの利用、再利用素材の活用など)をさします。このほかサステナブル建築、サステナブルデザイン、サステナブル経営などの複合語もあります。

SDGs

 sustainable を含む略語(頭文字語)も存在します。例えば SDGs は Sustainable Development Goals の略で「持続可能な開発目標」のこと。国連が2015年に採択した国際目標を指します。これは2001年の MDGs(ミレニアム開発目標)を引き継ぐ新しい目標。「貧困の解消」「飢餓の解消」「健康や福祉の実現」「教育機会の確保」「ジェンダーの平等」など17の目標および169のターゲット(具体的な目標達成基準)が掲げられています。

サステナビリティー

 形容詞の sustainable に対して、名詞形である sustainability という言葉が存在します。カタカナ語で表すと「サステナビリティー」「サスティナビリティー」となります。多くの場合は「持続可能性」と言い換えることが可能です。

言い換えたい場合は?

 ほとんどの場合「持続可能」を使って言い換えることが可能です。例えば「サステナブルな発展」は「持続可能な発展」と表現できます。ただし「持続可能」と言い換えただけでは、「持続可能な開発」の概念が伝わらないかも知れません。その場合は適宜、「環境負荷の少ない」「将来にわたって利益享受できる」といった補足説明を加えると良いでしょう。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

ISO 26000 企業の社会的責任(CSR)という概念があります。これは企業が果たすべき責任を、経済的責任や法的責任だけでなく、より広範な社会的責任(すなわち「持続可能な開発」への寄与)に広げようとする考え方をさします。この社会的責任について、国際標準化機構(ISO)が2010年に ISO 26000と呼ぶガイドラインを策定しました。企業を始めとする「あらゆる組織」を対象に、持続可能性にかかわる項目を含めた、社会的責任の観点から遵守すべき事柄をまとめた手引書です。

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 「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。
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定評あるカタカナ語辞典の第4版。約56,300語収録。詳細は こちら

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大きく見やすい活字でカタカナ新語が引ける。約13,000語収録。詳細は こちら

続 10分でわかるカタカナ語 第15回 レジェンド

2017年 6月 17日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「レジェンド」の意味と使い方

どういう意味?

 「伝説」または「偉業を成し遂げた人」のことです。

もう少し詳しく教えて

 レジェンド(legend)とは英語で「伝説」のこと。つまり「人々に語り伝えられている話」をさします。日本語では「(伝説のように語り継がれるべき)すぐれた」といったニュアンスで、商品名などに使われています。

 また、「伝説的な人物」というニュアンスから、「偉業を成し遂げた人」といった意味でも使われます。端的に言えば「偉人」のことです。例えば「野球界のレジェンド」といった場合は「野球界の偉大な選手」を意味します。

 ちなみに legend の語源は、ラテン語で「聖人伝」を意味する legenda です。直訳では「読まれるべき」という意味を持っています(参考:『ランダムハウス英和辞典』小学館)。つまり「読まれるべき」ものが「伝説」であり、伝説のように語り伝えられるべき人物が「偉人」ということになるわけです。

どんな時に登場する言葉?

 「伝説」の意味のレジェンドは商品名・創作作品などの分野で、「偉人」の意味のレジェンドは、スポーツ・文化などの分野で登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 日本語でレジェンドという言葉が好んで使われるようになったのは、1980年代以後のことです。普及の先導役となったのは商品名でした。

 例えば本田技研工業が乗用車のブランド名として「レジェンド」を使い始めたのが1985年のこと。また、宝酒造が焼酎のブランド名として「純レジェンド」(のちの「宝焼酎 レジェンド」)を使い始めたのが1988年のことでした。いずれも、「語り伝えられる(ほどすぐれた)もの」という意味合いによって、レジェンド(伝説)という言葉を「高級感」を演出する手段として使っている点で共通します。

 2014年に開かれたソチ冬季五輪で、7度目のオリンピック出場となるスキージャンプの葛西紀明(かさい・のりあき)選手(当時41歳)が銀メダルを獲得しました。このとき葛西選手に対する称号として、「レジェンド」が一躍注目を浴びました。「伝説的人物」という、この新しい意味の「レジェンド」は、同年の新語・流行語大賞のトップテン入りを果たしました。

リテラシーの使い方を実例で教えて!

「リビングレジェンド」

 存命中でありながら、生きる伝説となった人物は「リビングレジェンド」(living legend)と言われることがあります。

「○○界のレジェンド」

 また特定分野における偉人・巨匠などのことを「○○界のレジェンド」と表現することも可能です。例えば「角界のレジェンド」「ファッション界のレジェンド」といった具合です。スポーツや文化の世界でよく登場します。

レジェンドを使った命名(1)創作作品編

 創作作品の題名や設定にも、レジェンドがよく登場します。例えば音楽アルバムの題名(ボブ=マーリー『レジェンド』など)、映画の題名(2007年のアメリカ映画『アイ アム レジェンド』、2015年のイギリス映画『レジェンド 狂気の美学』など)、ゲームの題名(『レジェンド オブ レガシー』など)や設定(『妖怪ウォッチ』に登場するレジェンド妖怪など)、特撮・アニメの登場キャラクター(ウルトラマンレジェンドなど)といった例があります。

レジェンドを使った命名(2)スポーツ編

 スポーツ関係の命名でもよく登場します。例えば競馬の馬名(レジェンドハンターなど)、プロレスの選手名(ジョー=レジェンドなど)やグループ名(新日本プロレスのユニット、レジェンド軍など)といった事例が存在します。

言い換えたい場合は?

 「伝説」のレジェンドを言い換える場合は「伝説」「伝承」「言い伝え」などの言葉が使えます。

 いっぽう「偉人」のレジェンドを言い換える場合は「伝説の人物」「伝説的人物」「偉人」「巨匠」「大物」などが使えます。例えば「ファッション界のレジェンド」は「ファッション界の伝説的人物」「ファッション界の偉人」などと言い換えることができます。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

凡例 グラフなどに付記する凡例も「レジェンド」といいます。レジェンドの語源がラテン語の「読まれるべき」であることを考えれば、この意味の存在も理解できることでしょう。

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◆以前の連載は⇒「10分でわかるカタカナ語」へ

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【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

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【編集部から】

 「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。
 「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。
 これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。
 毎週土曜日更新。

【関連書籍】

●『コンサイスカタカナ語辞典 第4版』
定評あるカタカナ語辞典の第4版。約56,300語収録。詳細は こちら

●『見やすいカタカナ新語辞典』
大きく見やすい活字でカタカナ新語が引ける。約13,000語収録。詳細は こちら

続 10分でわかるカタカナ語 第14回 リテラシー

2017年 6月 10日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「リテラシー」の意味と使い方

どういう意味?

 「読み書き能力」、「情報読解能力」「活用能力」のことです。

もう少し詳しく教えて

 リテラシー(literacy)とは、もともと英語で「文字を読み書きする能力」のことを意味します。いわゆる「識字(しきじ)」のことです。

 しかし現在日本語で登場するリテラシーは、多くの場合、あるものに関する知識やその「活用能力」を意味します。「○○リテラシー」のように複合語としても多く使われます。例えばメディアリテラシーとは「情報メディアの活用能力」、つまり「情報メディアが伝える内容を主体的に読み解く能力」を意味します。

どんな時に登場する言葉?

 「活用能力」の必要性が指摘されている分野で登場する言葉です。例えばメディア・情報・IT(情報通信技術)・教育などの分野で登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 古くは1959年の学術誌に「識字」の意味での使用例が認められますが、登場機会が増えたのは、1980年代以降のことだと思われます。例えば1985年(昭和60)に郵政省(現総務省)が発表した『通信白書』には「主体的な選択により情報を活用できる情報化リテラシー(情報を使いこなす能力)のかん養」という表現も登場しました。

 また、経済協力開発機構(OECD)が義務教育修了段階(15歳)の生徒を対象に2000年から3年ごとに行っている学習到達度調査(PISA)では、調査する3つの分野として、「読解力」の他に、「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」という分野名があります。

 今後も社会の中で、情報を読み解き活用する能力が必要とされる「新しいものごと」が登場するたび、それに対応する○○リテラシーが登場するものと思われます。

リテラシーの使い方を実例で教えて!

「リテラシーが高い」

 読解能力・活用能力の「程度や有無」について述べる場合、「リテラシーが高い(低い)」「リテラシーが不足している」「リテラシーがある(ない)」などの表現が可能です。

 またそうした能力の「獲得や育成」について述べる場合は「リテラシーを持つ」「リテラシーを身につける」「リテラシーを向上させる」「リテラシーを高める」「リテラシーを育成する」などの表現も可能です。

「○○リテラシー」

 特定分野における活用能力のことを「○○リテラシー」と表現できます。例えばメディアリテラシー(後述)、情報リテラシー(後述)、IT リテラシー(情報通信技術の活用能力)、デザインリテラシー(デザインについての知識や活用能力)、ネットリテラシー(インターネットの活用能力)、ヘルスリテラシー(健康維持のために必要となる情報やサービスの活用能力)、金融リテラシー(金融や経済に関して身につけるべき基本能力)などの表現があります。

「メディアリテラシー」

 新聞・雑誌・テレビ・インターネットなどの情報メディア(情報媒体)を利用する能力や、それらのメディアが伝える内容を主体的に読み解く能力のことを「メディアリテラシー」と呼びます。たとえばニュースとして伝わった情報を批判的に吟味したり、そこから自分自身の意見を形作ったりする能力をさします。

「情報リテラシー」

 情報を収集・分析・活用するための能力のことを「情報リテラシー」と呼びます。前述したメディアリテラシーも、情報リテラシーの一種と捉えることも可能です。

言い換えたい場合は?

 「読解能力」「読み解く力」「活用能力」などと表現できます。また「○○を活用する力」「○○を使いこなす力」などの表現も可能です。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

DHMO 読み手や聞き手の科学リテラシーや情報リテラシーを試す、有名なジョークのひとつに「DHMO(ジハイドロジェンモノオキサイド/一酸化二水素)」というネタがあります。「DHMO は酸性雨の主成分であり、地形の侵食を引き起こし、サビの原因にもなる物質だ。それにも関わらず DHMO の規制は不十分で、実際、多くの食品に DHMO が含まれている」といった内容です。
 実はこの DHMO とは「水(H2O)」のこと。前述した内容はいずれも水に関する事実を述べているだけですが、ことさら否定的側面だけを取り上げて、読み手や聞き手に偏った印象を与えています。

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【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

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【編集部から】

 「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。
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続 10分でわかるカタカナ語 第13回 リソース

2017年 6月 3日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「リソース」の意味と使い方

どういう意味?

 「資源」のことです。

もう少し詳しく教えて

 リソース(resource)とは、英語で「資源」を意味する言葉です。すなわち「なにかに役立つものごと」のことです。

 具体的には、水・鉱物・化石燃料などの「天然資源」、景観・史跡・風物などの「観光資源」、人・物・金・時間などの「経営資源」、コンピューターにおける「計算資源」(後述)など、あらゆる資源のことを「リソース」と言えます。風物や時間のように「物質ではないもの」もリソースに含まれる点に注目してください。

どんな時に登場する言葉?

 あらゆる分野で登場する言葉です。

 例えば、「個別の資源を総称したい」場合。つまり人・物・金をまとめてひとつの言葉で表現したい場合などです。

 また、「資源という言葉を避けたい」場合。「天然資源」に対して、経営資源などの「非」天然資源をはっきり区別して言う場合に、リソースという言葉が用いられることも多いようです。

どんな経緯でこの語を使うように?

 古くから使われている言葉です。例えば大阪朝日新聞が1938年(昭和13)5月から6月にかけて掲載した連載記事「建設途上の満洲経済を語る」には、満州の水力発電に関するこんな記述が登場します。「しかも満洲にはこれ以外に将来開発さるべき水力電気のリソースは沢山あります」(参考:神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫)。この場合のリソースは「水力発電に適する場所」を意味しています。

 また1970年から80年代にかけて、技術書や論文などでリソースという言葉の登場機会が増えた時期もありました(参考:国立国会図書館サーチ)。この時期にコンピューターの社会利用が進み、リソース(計算資源)への言及も増えたことが背景にあります。

リソースの使い方を実例で教えて!

リソースと結びつきやすい言葉

 一般にリソースと結びつきやすい言葉には「活用」「集中」「追加」「管理」「不足」「確保」「消費」 などがあります。例えば「リソースを活用する」「リソースを集中させる」「リソース不足」「リソース確保」などと表現できます。

 またコンピューターの分野では、以上の一部に加えて「割り当て」「最適化」「配置」「統合」「共有」「定義」「制限」「解放」「拡張」「アクセス」などの言葉もよく使われます。 例えば「リソースを割り当てる」「リソースを解放する」「リソースにアクセスする」「リソース定義」などと表現できます。

「ヒューマンリソース」

 経営資源のうち人的資源(人材)のことを「ヒューマンリソース」(human resources)と呼びます。ただし、「資源=消費するもの」という印象を避けるために「ヒューマンキャピタル(human capital:人的資本)」と言い換える場合もあります。

コンピューターの「リソース」

 コンピューターの分野では「情報処理のために必要な能力」を総称して、リソース(計算資源)と呼んでいます。狭義には「CPU時間」(中央処理装置の占有時間)と「メモリー使用量」(記憶装置の占有量)を総称する概念なのですが、それ以外の資源を幅広く含める場合もあります(例:ハードディスクなどの容量、ネットワークの帯域幅など)。

 また基本ソフトによっては、その基本ソフトに特有である資源にリソースの語を使っている場合もあります(例:ウィンドウズのシステムリソースなど)。

言い換えたい場合は?

 基本的には「資源」と言い換えることが可能です。またリソースが指し示す対象によっては「天然資源」「経営資源」「観光資源」「計算資源」などの言葉を使うこともできます。さらに、具体的に「水・鉱物・化石燃料」(天然資源)、「景観・史跡・風物」(観光資源)、「人材・物資・予算・時間」(経営資源)、「CPU時間・メモリー占有量」(計算資源)などと言い換えてしまう方法もあります。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

URL の R ウェブページなどの住所(例:http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/)を表現するために用いる URL。この URL は uniform resource locator を略した言葉です。ここでいう resource(リソース)とは 「資源」としてのウェブページやインターネット上の文書、画像などのこと。その1つ1つのありかを統一的な形式で示したものが URL ということになります。

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続 10分でわかるカタカナ語 第12回 ユニバーサル

2017年 5月 27日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「ユニバーサル」の意味と使い方

どういう意味?

 「全世界にわたる」「すべてで通用する」という意味です。

もう少し詳しく教えて

 ユニバーサル(universal)とは「宇宙に関わる・世界的な」「普遍的な」「汎用・万人向け」などを表す言葉です。これらの意味の中核には「すべてで通用する」というイメージがあります。

 例えば「ユニバーサルな視野に立つ」という表現は、文脈にもよりますが「世界的な視野に立つ」とか「普遍的な視野に立つ」などを意味します。言い換えると、その視野が世界的あるいは普遍的に「通用する」様子を意味するわけです。これは、特に社会の国際化や環境問題の深刻化などとの関わりにおいてよく使われる意味です。

 また「ユニバーサルな機能」という表現は、「汎用の機能」とか「万人向けの機能」を意味します。言い換えると、その機能があらゆる用途やあらゆる利用者に「通用する」様子を意味するわけです。特に福祉分野でこの表現が登場する場合、その多くがノーマリゼーション(性別や年齢、身体能力等に関わらずすべての人がともに普通に暮らせる社会の実現)と関わる概念を表します。

 もともと英語の universal は、宇宙や森羅万象のことを意味する universe(ユニバース)の形容詞形です。また universe の語源はラテン語の ūniversum で、直訳で「ひとつになった」ことを意味する言葉でした(参考:「ランダムハウス英和辞典」小学館)。つまり universal という言葉には「ひとつ」というイメージが隠れています。これが「ひとつのことがすべてに通用する」イメージにつながっています。

どんな時に登場する言葉?

 あらゆる分野で登場する言葉です。またユニバーサルを含む複合語もあらゆる分野で登場します。例えば福祉(ユニバーサルデザイン)、情報(ユニバーサルアクセス)、社会基盤(ユニバーサルサービス)、電気(ユニバーサル電源)など、さまざまな分野に専門用語が存在します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 古くから使われている言葉です。例えば明治時代に発行された外来語辞典『日用舶来語便覧』(棚橋一郎・鈴木誠一著/光玉館/1912年)には「ユニヴァーサル」の項目があり「全き(まったき=完全である)、全般の、普遍的」という解説が付いていました。

 また21世紀以降では、ゼロ年代(2000年〜2009年)前半のマスコミで、ユニバーサルという言葉の出現頻度が高まった時期がありました。電話事業におけるユニバーサルサービス(後述)について、議論が活発化したことが背景にあります。

 さらに、福祉関係で使われ始めていた「ユニバーサルデザイン」という言葉が一般に広がったのも、おおよそゼロ年代以降のことでした。

ユニバーサルの使い方を実例で教えて!

「ユニバーサルな観点」

 いずれの意味においても「ユニバーサルな」「ユニバーサルに」などの形を使うことができます。例えば「ユニバーサルな観点」「ユニバーサルに展開」といった具合です。

「ユニバーサルデザイン」

 障害の有無などに関係なく、すべての人が使いやすいように製品・建物・環境などを設計(デザイン)することを「ユニバーサルデザイン」といいます。ここでのユニバーサルは「万人向け」という意味です。似た概念に「バリアフリー」がありますが、こちらは「障害者・高齢者」などの視点を重視する概念。ユニバーサルデザインは「万人」の視点を重視する違いがあります。

「ユニバーサルアクセス」

 情報・通信・放送などの分野では「障害の有無や社会階層の違いなどに関わらず、誰でも情報や情報システムを利用できること」を「ユニバーサルアクセス」と呼びます。またその権利のことを「ユニバーサルアクセス権」とも呼んでいます。

「ユニバーサルサービス」

 また社会基盤(電話・電力・ガス・水道・郵便・放送・医療など)の分野では「社会全体で誰もが平等に享受できるようにすべき公共サービス」のことを「ユニバーサルサービス」と呼んでいます。ここでもユニバーサルが万人向けの意味で使われています。

 例えばNTT東日本・西日本には電話事業におけるユニバーサルサービス(固定電話の全国網の維持、緊急通報のシステム運用など)が義務付けられています。そのサービスを運営するための原資は、他事業者が拠出する(=他事業者の利用者が利用料金を通じて支払う)基金によって賄われています。

「ユニバーサル電源」

 汎用を意味するユニバーサルにも、さまざまな複合語が存在します。例えば電気・電子機器の分野では、世界各地の様々なプラグ形状や電圧に対応した電源装置のことを「ユニバーサル電源」と呼びます。またカメラの分野では、異なるメーカーでも共用できる交換用レンズの接続規格を「ユニバーサルマウント」と呼びます。

「ユニバーサルタイム」

 いわゆる世界時(学術的にはUTC = 協定世界時、UT0、UT1、UT2 の総称)のことを「ユニバーサルタイム」と呼びます。これは「世界の」という意味のユニバーサルの例です。

言い換えたい場合は?

 文脈によって「宇宙に関わる」「世界的な」「普遍的な」「汎用」「万人向け」などの表現から、適切な言葉を選び取って下さい。同じ「ユニバーサルな観点」という表現を言い換える場合でも、文脈によって「世界的な観点」を表す場合もありますし、「汎用性という観点」を表す場合もあります。

 なお国立国語研究所の『「外来語」言い換え提案』(2006年)では、ユニバーサルサービスを「全国一律サービス」「全国均質サービス」に、またユニバーサルデザインを「万人向け設計」「だれにでも使いやすい設計」に言い換える提案を行っています。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

USB の U パソコンとプリンターをつなぐ時や、スマホとコンセントをつなぐ時などに登場する「USB ケーブル」。この USB とは universal serial bus(ユニバーサルシリアルバス)の略。「汎用のシリアルバス」(注:シリアルバスは通信方式のひとつ)を意味します。「情報機器にあらゆる周辺機器を接続できる」という特徴が「ユニバーサル(汎用)」という名前に表されています。

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続 10分でわかるカタカナ語 第11回 マネージメント

2017年 5月 20日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「マネージメント」の意味と使い方

どういう意味?

 「管理」や「経営」を意味します。「マネジメント」とも言います。

もう少し詳しく教えて

 マネージメント(management)の基本的な意味は「物事をうまく扱うこと」です。

 端的に言えば、ひとつには「管理」です。例えば「部下をマネージメントする」と言った場合は「部下の仕事について、監督し指示・指導などを行うこと」、すなわち「部下の仕事を管理すること」を意味します。

 もうひとつには、「経営」ということです。「事業をうまく扱うこと」イコール「経営」と考えれば、この意味もよく理解できることでしょう。例えば「企業のマネージメント」という表現は「企業経営」と置き換えることが可能です。

どんな時に登場する言葉?

 管理が関わるあらゆる分野で登場します。管理の対象は人・時間・お金・資源など多岐にわたります。特に経営分野では、この言葉がよく登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 古くから使われている言葉です。例えば『最近野球術』(橋戸信著/博文館/1905年)という書籍では、野球チームの運営を意味する「マネーヂメント」が「総理法」という注釈とともに登場していました。この場合の「総理」とは「すべての事務をとりまとめて管理すること」(大辞林より)。つまり組織管理を意味するマネージメントが、明治時代にはすでに登場していたわけです。

 近年、マネージメントという言葉が注目された話題もありました。2010年、書籍『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海著/ダイヤモンド社/2009年)、通称『もしドラ』がベストセラーとなったのです。その影響で、経営学の父とも称されるピーター・ドラッカーの名著『マネジメント―課題・責任・実践(Management: Tasks, Responsibilities, Practices)』(1973年、日本語版は1974年)が、雑誌・新聞・テレビなどのメディアであらためて注目されたのです。

マネージメントの使い方を実例で教えて!

「マネージメントする」

 動詞として使えます。例えば「組織をマネージメントする」と言った場合は「組織を管理・運営する」ことを意味します。

経営者を意味する「マネージメント」

 経営分野におけるマネージメントには「経営者」「経営陣」「経営体制」などの意味もあります。例えばトップマネージメントとは「最上位の経営者層」のこと。ミドルマネージメントとは「中間管理職」を意味します。

「マネージメント手法」のいろいろ

 経営手法を表す言葉のなかには、マネージメントを含む複合語が数多く存在します。例えば人材管理を行うための「人材マネージメント」、事業遂行を管理するための「プロジェクトマネージメント」、危機管理のための「リスクマネージメント」、知識を共有するための「ナレッジマネージメント」など、実に様々な経営手法が存在するのです。

「マネージメントシステム」

 そんな経営手法のうちシステム(体系的な仕組み)として確立したものを、特に「マネージメントシステム」と呼びます。このような仕組みの中には、個別の企業が開発・運用する仕組み(例:トヨタ自動車の「トヨタ生産方式」など)がある一方で、標準化組織が制定・要求する仕組みもあります。

 後者のうち有名なのが、ISO(国際標準化機構)が制定する「マネジメントシステム規格」でしょう。例えば「環境マネジメントシステム」(企業が環境保全を行うための仕組み)を規格化した ISO-14000シリーズや、「品質マネジメントシステム」(企業が品質管理を行うための仕組み)を規格化した ISO-9000シリーズが知られています。

そのほかの「マネージメント」

 経営以外の分野にも、マネージメントを含む複合語は数多く存在します。例えば資産管理を意味する「アセットマネージメント」、不動産管理を意味する「プロパティマネージメント」、怒りの感情を制御するための「アンガーマネージメント」、心理的ストレスを制御するための「ストレスマネージメント」、時間管理を意味する「タイムマネージメント」などがあります。

言い換えたい場合は?

 一般には「管理」または「経営」を使います。例えば「部下をマネージメントする」を言い換える場合は「部下を管理する」と表現できますし、「企業のマネージメント」を言い換える場合は「企業経営」と表現できます。なお「トップマネージメント」のように「経営陣」を当てるのが適切な場合もありますので、注意してください。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

馬を馴(な)らす そもそも英語の management は、動詞である manage(マネージ)の名詞形です。その manage の語源は、イタリア語で「馬を調教する」こと、言い換えると「馬を馴らす」ことを意味する maneggiare(マネジャーレ)という言葉でした。この「馬を馴らす」意味が転じて、マネージメントは「物事をうまく扱うこと」を意味するようになったのです。

マネージャー マネージメントの仲間の言葉にマネージャー(manager)があります。日本語では「レストランの支配人」や「芸能人のサポートを行う人」さらには「スポーツチームのサポートを行う人」などの意味で使われてきた言葉ですが、英語の manager から、「経営者」という意味でも使われるようになっています。
 前述した『もしドラ』は、野球部のマネージャーを任された女子高生が主人公となる物語でした。物語の冒頭、この女子高生はマネージャーの仕事を始めるにあたって、マネージャーの意味を辞書で調べます。その過程で彼女は「マネージメント」という言葉を発見しました。そして彼女はマネージメントの関連書籍を書店に探しに行き、経営学者ドラッカーの著作に出会うことになるのです。

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