続 10分でわかるカタカナ語

第15回 レジェンド

2017年6月17日

どういう意味?

「伝説」または「偉業を成し遂げた人」のことです。

もう少し詳しく教えて

レジェンド(legend)とは英語で「伝説」のこと。つまり「人々に語り伝えられている話」をさします。日本語では「(伝説のように語り継がれるべき)すぐれた」といったニュアンスで、商品名などに使われています。

また、「伝説的な人物」というニュアンスから、「偉業を成し遂げた人」といった意味でも使われます。端的に言えば「偉人」のことです。例えば「野球界のレジェンド」といった場合は「野球界の偉大な選手」を意味します。

ちなみに legend の語源は、ラテン語で「聖人伝」を意味する legenda です。直訳では「読まれるべき」という意味を持っています(参考:『ランダムハウス英和辞典』小学館)。つまり「読まれるべき」ものが「伝説」であり、伝説のように語り伝えられるべき人物が「偉人」ということになるわけです。

どんな時に登場する言葉?

「伝説」の意味のレジェンドは商品名・創作作品などの分野で、「偉人」の意味のレジェンドは、スポーツ・文化などの分野で登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

日本語でレジェンドという言葉が好んで使われるようになったのは、1980年代以後のことです。普及の先導役となったのは商品名でした。

例えば本田技研工業が乗用車のブランド名として「レジェンド」を使い始めたのが1985年のこと。また、宝酒造が焼酎のブランド名として「純レジェンド」(のちの「宝焼酎 レジェンド」)を使い始めたのが1988年のことでした。いずれも、「語り伝えられる(ほどすぐれた)もの」という意味合いによって、レジェンド(伝説)という言葉を「高級感」を演出する手段として使っている点で共通します。

2014年に開かれたソチ冬季五輪で、7度目のオリンピック出場となるスキージャンプの葛西紀明(かさい・のりあき)選手(当時41歳)が銀メダルを獲得しました。このとき葛西選手に対する称号として、「レジェンド」が一躍注目を浴びました。「伝説的人物」という、この新しい意味の「レジェンド」は、同年の新語・流行語大賞のトップテン入りを果たしました。

リテラシーの使い方を実例で教えて!

「リビングレジェンド」

存命中でありながら、生きる伝説となった人物は「リビングレジェンド」(living legend)と言われることがあります。

「○○界のレジェンド」

また特定分野における偉人・巨匠などのことを「○○界のレジェンド」と表現することも可能です。例えば「角界のレジェンド」「ファッション界のレジェンド」といった具合です。スポーツや文化の世界でよく登場します。

レジェンドを使った命名(1)創作作品編

創作作品の題名や設定にも、レジェンドがよく登場します。例えば音楽アルバムの題名(ボブ=マーリー『レジェンド』など)、映画の題名(2007年のアメリカ映画『アイ アム レジェンド』、2015年のイギリス映画『レジェンド 狂気の美学』など)、ゲームの題名(『レジェンド オブ レガシー』など)や設定(『妖怪ウォッチ』に登場するレジェンド妖怪など)、特撮・アニメの登場キャラクター(ウルトラマンレジェンドなど)といった例があります。

レジェンドを使った命名(2)スポーツ編

スポーツ関係の命名でもよく登場します。例えば競馬の馬名(レジェンドハンターなど)、プロレスの選手名(ジョー=レジェンドなど)やグループ名(新日本プロレスのユニット、レジェンド軍など)といった事例が存在します。

言い換えたい場合は?

「伝説」のレジェンドを言い換える場合は「伝説」「伝承」「言い伝え」などの言葉が使えます。

いっぽう「偉人」のレジェンドを言い換える場合は「伝説の人物」「伝説的人物」「偉人」「巨匠」「大物」などが使えます。例えば「ファッション界のレジェンド」は「ファッション界の伝説的人物」「ファッション界の偉人」などと言い換えることができます。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

凡例 グラフなどに付記する凡例も「レジェンド」といいます。レジェンドの語源がラテン語の「読まれるべき」であることを考えれば、この意味の存在も理解できることでしょう。

筆者プロフィール

もり・ひろし & 三省堂編修所

新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

編集部から

「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。

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これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。

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