引きて見る子(ね)の日の松はほどなきをいかでこもれる千代にかあるらん
出典
拾遺・雑春・一〇二三
訳
(根を)引いてみると、子の日の松はあまり長くもないのに、どうしてこの松の中に千年もの寿命がこもっているのであろう。
(『全訳読解古語辞典〔第四版〕』「ねのひのまつ」)
今回は、正月の行事にちなんだ歌を取り上げました。
『三省堂 全訳読解古語辞典』で、「子の日の松」を引いてみると、「正月の「子の日の遊び」のときに、長寿を祈って引き抜いて植える小松。」と解説があります。
さらに、「子の日の遊び」を引いて調べてみると、「正月のはじめの子の日に、人々が野に出て小松を引いたり、若菜をつんだり、また和歌をよみ宴を開いて長寿を祝った行事。」とあります。
また、上級者向け(四万語クラス)の古語辞典『三省堂 詳説古語辞典』で、「ねのひ」を引いてみると、以下のように、コラム「古典の世界」で、若菜を摘む行事との関係にも触れられています。
ねのひ【子の日】[名]①十二支の「子」に当たる日。 ②正月初めの子の日に行われた年中行事。不老長寿を願って、野外に出て小松を引き、若菜を摘んだ。また、その小松や若菜を贈る風習もあり、多く和歌がつけられた。和歌では「根延び」とかけられることも多い。奈良時代から見られる行事だが、平安時代に入って一般に広まり、また、この日は宮中でも宴が催された。=子の日の遊び。(季-春)
〔古典の世界〕「子の日②」とよく似た内容の初春の行事として、正月七日に若菜を摘む「人日(じんじつ)」の行事がある。この二つは別種の行事として区別されていた。とくに、「子の日②」では、小松を根付きのまま引き、その生命力を摂取することに重点が置かれた。
松は長寿の象徴であり、この小松を根引きする行事が、現在の門松の起源になったとも言われています。また、「若菜摘み」のほうも、現在の1月の行事の何かに受け継がれているとされていますが、何の行事でしょうか。答えは、『詳説古語辞典』「若菜摘み」の項目を引いてご確認ください。以下のように解説があります。
わかなつみ[名]正月最初の「子の日」に、野に出て七種の若菜を摘む宮中の行事。もとは神事であったが、のちには春の行楽となった。
〔古典の世界〕邪気を払う「若菜摘み」
(略)子の日とは別に、正月七日(人日(じんじつ))に若菜を供する行事がある。これは、元来中国伝来の行事であったらしい。この七日の若菜は、七種の若菜を用いることになっていて、現在でも「七種粥(ななくさがゆ)」として行われている。