名詞の語頭を大文字で始める大文字書きも視覚的な区別であって、耳で聞いたのではこのような区別はわからない。近世までは強調したい語を大文字で書くことがあった。今日でも固有名詞は大文字で書く。また、新正書法では手紙におけるdu, ihrおよびその変化形は大文字書きにすることを義務づけていたが、その後の諮問委員会の勧告によって改訂新正書法ではどちらも認められることとなった。相手を指すSie「あなた・あなた方」を大文字書きするのは3人称複数のsie「彼ら、彼女ら、それら」と区別するためである。
名詞以外の代名詞、前置詞、副詞、接続詞、動詞などを名詞として使う場合は名詞であることがはっきりしているから大文字で書くのに迷うことはない。これらは中性名詞になる:das Ich「自己」、das Für und Wider「賛否」、das Aber「異議」、das Lesen「読書」。
形容詞を名詞化したものは自然性の区別がある:der Kranke「(男の)病人」、die Kranke「(女の)病人」、das Kranke「病的なもの」。また、Er ist der älteste unter uns.「彼は私たちの中で最年長です」などにおけるder ältesteは比較変化のひとつであるから小文字で書くが、die Ältesten des Dorfes「村の長老達」のような場合は大文字で書く。
hundert, tausendは数詞としては小文字で書くが、「数百(人・もの)、数千(人・もの)」といった不定の意味の名詞として複数形で使い、大文字または小文字で書く:Tausende/tausende von Menschen「数千の人」。しかし、Dutzend「ダース」は名詞であるが、やはり「数十(人・もの)」の意味では複数形で使い、大文字または小文字で書く:Dutzende/dutzende von Büchern「数十冊の本」。また、ein Paarは「一組、一対の」の意味の名詞であるが、ein paarは「2,3の」の意味の不定数詞としては小文字で書く:ein paar Leute「2,3人の人」。
時間を表すViertel「15分」、drei Viertel「45分」は大文字で書く:Es ist Viertel vor acht.「8時15分前です」。ただし、viertel acht「7時15分」、 drei viertel acht「7時45分」などはひとまとまりの表現として小文字で書く。