「Harris Visible Typewriter No.4」は、ハリス(De Witt Clinton Harris)率いるハリス・タイプライター社が、1912年頃に発売したタイプライターです。販売は、シアーズ・ローバック社(Sears, Roebuck & Company)が独占しておこなっており、全米に渡ってカタログ通信販売がおこなわれていました。
「Harris Visible Typewriter No.4」は、28キーのフロントストライク式タイプライターです。各キーを押すと、対応する活字棒(type arm)が立ち上がって、プラテンの前面に置かれた紙の上にインクリボンごと叩きつけられ、紙の前面に印字がおこなわれます。通常の状態では小文字が印字されますが、「CAP」キー(キーボード下段の左右端)を押すと、タイプバスケットが持ち上がって大文字が印字されるようになります。また、「FIG」キー(中段の左右端)を押すと、タイプバスケットが下がって記号(あるいは数字)が印字されるようになります。キーボード上段のさらに右上の端には「SHIFT LOCK」キーが準備されており、「CAP」キーもしくは「FIG」キーを押しっぱなしにできます。
「Harris Visible Typewriter No.4」のキー配列は、いわゆるQWERTY配列で、各キーに大文字・小文字・記号(あるいは数字)の3種類の文字が配置されています。上段の10個のキーには、大文字のQWERTYUIOPと、小文字のqwertyuiopと、数字の1234567890が、それぞれ配置されており、その右側に「BACK SPACER」キーがあります。中段の9個のキーには、大文字のASDFGHJKLと、小文字のasdfghjklと、記号の@$%^*=/¢#が、それぞれ配置されており、左右の端には「FIG」キーがあります。下段の9個のキーには、大文字側にZXCVBNM&.が、小文字側にzxcvbnm-,が、記号側に()?’”:;_.が、それぞれ配置されており、左右の端には「CAP」キーがあります。ピリオドが重複して収録されているため、28キーで83種類の文字となっています。
この広告の後、ハリス・タイプライター社は、ウィスコンシン州フォンデュラックからイリノイ州シカゴへ本社を移し、社名もレックス・タイプライター社と改めました。レックス・タイプライター社となってからは、シアーズ・ローバック社向けの「Harris Visible Typewriter No.4」を製造しつつ、新たに「Rex Visible Typewriter No.4」を製造販売しはじめたようです。