(QWERTY配列の変遷100年間(3)からつづく)
1911年3月、シカゴ・バーリントン&クインシー鉄道は、モークラム社の「The Morkrum Printing Telegraph」を用いた電信業務を開始しました。「The Morkrum Printing Telegraph」は、アルファベット大文字26字、数字10字、記号17字と空白を通信できる遠隔タイプライターで、以下のようなキー配列でした。「FIG」キーを押すと、その後は数字と記号が、「REL」キーを押すと、その後は大文字が印字されます。「CAR RET」はキャリッジリターンを、「LINE FEED」は改行を、それぞれ意味していました。
その後、モークラム社は、1925年1月にモークラム・クラインシュミット社に、1928年12月にテレタイプ社になります。テレタイプ社は、1931年11月、AT&TのTWX(テレックス)サービス開始に合わせて、「Teletype Model 15」を発売しました。「The Morkrum Printing Telegraph」以来のキー配列を基本的には踏襲しているものの、「FIG」は「FIGS」に、「REL」は「LTRS」になっており、記号はほとんどが変更されていました。
1963年5月、テレタイプ社は「Teletype Model 33」を発表しました。「Teletype Model 33」は、ASCIIの大文字26字、数字10字、記号37字などを通信できる遠隔タイプライターで、数字キーがQWERTYUIOPから独立して最上段に移動していました。
1971年3月、アメリカ規格協会はANSI X4.14という規格を制定し、その中で「Logical Bit Pairing」と「Typewriter Pairing」というコンピュータ用のキー配列を標準化しました。この「Logical Bit Pairing」は、「Teletype Model 33」のキー配列をコンピュータ用に改良したもので、ASCIIの94種類の文字を、48キーに配列したものでした。
「Logical Bit Pairing」をもとに、国際標準化機構では1975年7月、ISO 2530という国際規格を制定し、コンピュータ用の「48-key Layout」を標準化しました。
ISO 2530の「48-key Layout」は、あくまでもキー配列の目安に過ぎなかったため、各国は必ずしもこれに従いませんでした。アメリカは、2のシフト側に@を収録していました。フランスは、QWERTYではなくAZERTYを使い続け、数字はシフトキーを押しながら打つことを主張しました。ドイツはQWERTZに固執しました。結局、国際標準化機構は、1994年8月にISO 2530を廃止し、代わりにISO/IEC 9995という国際規格を制定しました。
ISO/IEC 9995では、記号キーの配置は基本的に各国の自由であり、アルファベットもAMQWYZについては各国ごとに定めてよい、ということになりました。数字も各国ごとに、小文字と同じ側でもいいし、大文字と同じシフト側でもいい、ということになりました。この結果、コンピュータのキー配列は、各国ごとにバラバラのままとなり、もはや統一されることは無くなったのです。