鈴木マキコ(夏石鈴子)さんに聞く、新明解国語辞典の楽しみ方

新明解国語辞典を読むために その6 用例 第1回

筆者:
2022年4月15日

語釈で、言葉の説明をしたあとに、「それでは、この言葉は実際に、こんな風に使いますよ」と、示しているのが用例です。その用例を、じっくり読むといろいろな感想が浮びます。

p.1113「どくどくしい【毒々しい】」

今はマスクをしているから、毒々しい口紅を見ることが少ない。コロナの後、反動で鮮やかな口紅を使いたくなる人が増えそうです。毒々しいキノコは、たぶん毒キノコでしょう。

p.1484「まめつ【磨滅・摩滅】」

これ、悲しいことです。でも、よく考えてみました。才能を発揮する場所は与えられていないのですから、その人に本当に才能があるのかどうか、実は誰にもわからない、っていうことはありませんか?

p.485「げんち【現地】」

えーと、①本妻が現地に乗り込む。②その逆もあり。③夫は逃亡し、第三の妻、登場、など今後についていろいろ考えられます。

p.563「これほど【此(れ)程】」

うわさを聞いて現場に来た。

p.594「さざなみ【漣・小波】」

語釈は「ちょっとした事が きっかけで、一波乱起きそうな気配を予感させる状態になることを表わす。」です。一波乱起きたほうがいいのに、お互い牽制しあって、さざなみがずっと立っているという状態は大変こわいです。

p.1318「ひといちばい【人一倍】」

用例は、こうですが、語釈は「その人の熱心さや なまけぶりなどが普通の人の二倍であること。」です。

p.694「しゃらくさい」

そうか、この言葉は、こう使えばいいのだな。

p.654「しそう【思想】」

思想書にしたらいいと思います。

p.1381「ふめいろう【不明朗】」

どんな店に入りましたか。

p.469「けったく【結託】」

語釈は、「〔悪い事に関して〕心を通じ合い、力を合わせること。」です。

p.821-822「すべて【全て・総て・凡て】」

と、言っているのは人間です。

p.825「ずらずら」

特に言うことは、ありません。

p.827「すりよる【擦(り)寄る】」

あはは、辞書にも出ている。

p.473「けれども」

①本当に読んだけれど、つまらなかったので覚えていない。②読んでいない。

 

筆者プロフィール

鈴木マキコ ( すずき・まきこ)

作家・新解さん友の会会長
1963年東京生まれ。上智大学短期大学部英語学科卒業。97年、「夏石鈴子」のペンネームで『バイブを買いに』(角川文庫)を発表。エッセイ集に『新解さんの読み方』『新解さんリターンズ』(以上、角川文庫)『虹色ドロップ』(ポプラ社)、小説に『いらっしゃいませ』『愛情日誌』(以上、角川文庫)『夏の力道山』(筑摩書房)など。短編集『逆襲、にっぽんの明るい奥さま』(小学館文庫)は、盛岡さわや書店主催の「さわベス2017」文庫編1位に選ばれた。近著に小説『おめでたい女』(小学館)。

 

編集部から

『新明解国語辞典』の略称は「新明国」。実際に三省堂社内では長くそのように呼び慣わしています。しかし、1996年に刊行されベストセラーとなった赤瀬川原平さんの『新解さんの謎』(文藝春秋刊)以来、世の中では「新解さん」という呼び名が大きく広まりました。その『新解さんの謎』に「SM君」として登場し、この本の誕生のきっかけとなったのが、鈴木マキコさん。鈴木さんは中学生の時に出会って以来、長く『新明解国語辞典』を引き続け、夏石鈴子として『新解さんの読み方』『新解さんリターンズ』を執筆、また「新解さん友の会」会長としての活動も続け、第八版が出た直後には早速「文春オンライン」に記事を書いてくださいました。読者と版元というそれぞれの立場から、これまでなかなかお話しする機会が持ちづらいことがありましたが、ぜひ一度お話しをうかがいたく、このたびお声掛けし、対談を引き受けていただきました。「新解さん」誕生のきっかけ、その読み方のコツ、楽しみ方、「新解さん友の会」とは何か、赤瀬川原平さんとの出会い等々、3回に分けて対談を掲載いたしました。その後、鈴木さん自身による「新解さん」の解説記事を掲載しております。ひきつづき、どうぞお楽しみください。