「方言的特徴が日本一薄い」と評されることもある埼玉県内で、方言グッズを探してみました。
土産物店・観光案内所などを、何か所かまわりましたが、方言をあしらったものは、たしかに見つけにくい感じで、あきらめかけたところ、目にとまったのが「だんべ漬」(行田市・飯田屋商店製)。例によって、いくつかおたずねをしてみました。
*
●「だんべ」と名付けたねらいは?
行田地方で愛されている方言「だんべ」を老舗の当店の漬物に銘うちました。皆様に喜んでいただけるよう、ぬくもりのあるたまり漬けに仕上がりました。
●お客さんの反応は?
だんべ漬けは、大根・きゅうり・玉ねぎの3種で、大根ときゅうりは、地元・埼玉県産を使用しております。奈良漬同様、少し甘めで、行田の小学校・中学校の給食にも出され、子どもから大人まで愛される漬物になりました。
*
埼玉県を代表する民謡「秩父音頭」でも、「あちゃ・むし・だんべ」[=それでは・~だね・~でしょう]のはやし言葉がはいります。「秩父音頭」のご当地・秩父市内の学校給食には、かつて「だんべえうどん」というメニューが登場したこともあります。(主催埼玉県教育委員会ほか 平成13年度学校給食調理コンクール 課題献立部門入賞メニュー)。
作成者のコトバとして、
「だんべえ」は「~でしょう」という意味の秩父地方の代表的な方言ですね。中に秩父地方の特産品を使用しているので、この献立名をつけました。
と添えられています。(取材協力:学校給食歴史館/北本市)
現在は、猪肉が高価であるため、学校給食のメニューにはありませんが、秩父市内では、商品化されているそうです。
『埼玉県方言辞典』(井上史雄監修、手島 良編著、東京外国語大学日本語学ゼミナール協力/桜楓社 1989.7)によれば、「ダンベ・ダンべー」は、広く埼玉県内で使用されている(あるいは、使われていた)ことが確認できます。
かつて、NHKテレビが放映した「ふるさと日本のことば 埼玉県」(2000.7.30)でも、「そうだんべ」が「21世紀にのこしたい埼玉のことば」に入っていました。
「だんべ」を用いるのは、埼玉県民に、ふるさとを感じさせるキーワードによる命名だということがわかります。