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第41回 【最強寒波】さいきょうかんぱ

筆者:
2023年1月31日

[意味]

俗に、そのシーズンに押し寄せる最も強い寒波をいう。

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天気予報やニュースで見聞きするようになった「最強寒波」。正式な気象用語ではなく、「真冬日」(最高気温が0度未満)のような明確な定義はないようです。新聞では見出しでよく目にし、記事中では「この冬一番の強い寒波」などとあり、これを短くまとめ伝わりやすくした表現といったところでしょうか。

ビジネスデータベースサービス「日経テレコン」で調べたところ、日本経済新聞での「最強寒波」の初出例は2018年2月1日付夕刊1面の「最強寒波 消費に明暗」という見出しでした。参考に他紙を検索してみると、2005年からポツポツと使われ始め、2010年代に入り広がったという傾向が見えました。まだまだ新語の部類に入ると言っていいのかもしれません。

1月下旬、日本列島にはこの冬一番の強い寒気が流れ込み、北日本から西日本の日本海側を中心に大雪となりました。「10年に1度の低温」になるといわれた寒さのなか、高速道路や国道で多数の車両が立ち往生。公共交通機関も大きく乱れ、鉄道では約10時間も乗客が車内に取り残される事態も。今回はこれまで以上に寒波への備えを求める呼びかけがなされていましたが、自然が相手なだけにすべてのトラブルを回避できないもどかしさがあります。

「最強」という言葉の響きには警戒心を持たせる効果があるようです。普段は気にもしていない水道管の凍結を心配するなど……。何かしなければと思っても、個人でできる対策は限られています。私といえば、出社予定を在宅勤務に切り替えることしかできませんでした。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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