[意味]
自らの存在や能力を、他人から認められたいと望むこと。米国の心理学者・マズロー(1908~70年)が唱えた「欲求段階説」のうちのひとつの段階。
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レーン上のすしに大量のワサビをのせる、しょうゆ差しの注ぎ口や使用前の湯飲みをなめる、使用済みの箸を使い容器から直接ガリを食べる――。回転ずしをはじめ外食店での迷惑行為を撮影した動画がSNS(交流サイト)上に投稿されるのが目立ちます。
ネット利用者の注目を集めるのが狙いとされるこうした行為は、「承認欲求」を満たすための行動などといわれます。承認欲求とは他人から認められたい欲求のこと。誰もが持っているようなものですが、「いいね」欲しさにエスカレートし犯罪にもなるような行為は、決して面白いというだけでは済まされません。
日本経済新聞での「承認欲求」の初出は、1993年10月19日付夕刊の「子育てで満たされる承認欲求」という記事で、90年代はこの1件のみ。その後はしばらく0件の年が続きますが、2000年代に入り仕事や職場での評価の話題でポツポツと出始め、2010年代半ばごろからSNSとの関連が取り沙汰されるようになってきました。
私が30年ほど従事する校閲の仕事は、裏方であり目立つようなものではありません。間違えを見つけるのは当たり前で、他人が作ったミスを見落とせば叱られる、そんな繰り返しが続きます。どんなに良い仕事をしても、他者からは見えにくいところがあります。自らの仕事ぶりを誇示する人がいますが、それはそれでよいことでしょう。ただ、なかには小さなことを大げさに誇張するような人も。仕事の重要ポイントを周囲の人と共有するのが目的ならよいのですが、見ていて行き過ぎに感じることもままあります。これも「承認欲求」がもたらすものなのでしょうか。
良い仕事に対しては声掛けするようにしていますが、当事者が良いと思っていても「いいね」と言えないものがあるのです。
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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。