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第42回【承認欲求】しょうにんよっきゅう

筆者:
2023年2月27日

[意味]

自らの存在や能力を、他人から認められたいと望むこと。米国の心理学者・マズロー(1908~70年)が唱えた「欲求段階説」のうちのひとつの段階。

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レーン上のすしに大量のワサビをのせる、しょうゆ差しの注ぎ口や使用前の湯飲みをなめる、使用済みの箸を使い容器から直接ガリを食べる――。回転ずしをはじめ外食店での迷惑行為を撮影した動画がSNS(交流サイト)上に投稿されるのが目立ちます。

ネット利用者の注目を集めるのが狙いとされるこうした行為は、「承認欲求」を満たすための行動などといわれます。承認欲求とは他人から認められたい欲求のこと。誰もが持っているようなものですが、「いいね」欲しさにエスカレートし犯罪にもなるような行為は、決して面白いというだけでは済まされません。

日本経済新聞での「承認欲求」の初出は、1993年10月19日付夕刊の「子育てで満たされる承認欲求」という記事で、90年代はこの1件のみ。その後はしばらく0件の年が続きますが、2000年代に入り仕事や職場での評価の話題でポツポツと出始め、2010年代半ばごろからSNSとの関連が取り沙汰されるようになってきました。

私が30年ほど従事する校閲の仕事は、裏方であり目立つようなものではありません。間違えを見つけるのは当たり前で、他人が作ったミスを見落とせば叱られる、そんな繰り返しが続きます。どんなに良い仕事をしても、他者からは見えにくいところがあります。自らの仕事ぶりを誇示する人がいますが、それはそれでよいことでしょう。ただ、なかには小さなことを大げさに誇張するような人も。仕事の重要ポイントを周囲の人と共有するのが目的ならよいのですが、見ていて行き過ぎに感じることもままあります。これも「承認欲求」がもたらすものなのでしょうか。

良い仕事に対しては声掛けするようにしていますが、当事者が良いと思っていても「いいね」と言えないものがあるのです。

【承認欲求】の出現記事件数

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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