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第76回【年内入試】ねんないにゅうし

筆者:
2025年12月29日

[意味]

大学入試の「総合型選抜(旧AO入試)」(9月出願開始)と「学校推薦型選抜」(11月出願開始)の総称。一般選抜(一般入試)が1~3月に行われるのに対し、9~12月に実施し合否が決まることが多い。

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2025年は「年内入試」が話題となる年でした。新聞記事データベース「日経テレコン」で、日本経済新聞の朝夕刊に「年内入試」が現れた記事を検索すると、初出の2022年から3年間は各4件だったのが、2025年は11件に増えています(12月15日現在)。大学入試のルールに変更があり、その報道が増えたのが影響しました。

従来の「年内入試」は9~12月に書類審査や面接などによって多面的に人物を評価するもので、学力試験は行わないとされていました。とはいえ、早期に入学者を確保したい大学にとって、学力不足による入学後のミスマッチを避けるためには、基礎学力を確認したいという思いがあるのも事実。これまでも一部の大学では事実上の学力試験を取り入れているところがありました。

入試ルールが形骸化するなか、文部科学省は6月に公表した「令和8年度大学入学者選抜実施要項」で、小論文や面接、実技などと組み合わせることを条件に「年内入試」での学力試験の実施を容認しました。今後は学力試験を課す大学がさらに増えていくものと予想されますが、これが単なる一般選抜の前倒しにならないよう、丁寧な人物評価をするという「年内入試」の趣旨は守られてほしいものです。

11月上旬、親戚の高校3年生から東京都内の私立大学に合格したとの連絡がありました。私が受験した40年ほど前と比べ、ずいぶん早いものだとそのときは思いましたが、私大入学者の実に6割が年内入試の合格者だといい、いまやこれが当たり前とのこと。年が明けたら、入学祝いのことを考えなければなりませんね。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『新聞・放送用語担当者完全編集 使える! 用字用語辞典 第2版』(共著、三省堂)、『方言漢字事典』(項目執筆、研究社)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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