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第79回【二重価格】にじゅうかかく

筆者:
2026年3月30日

[意味]

①価格を統制するために、同じ商品に設けられた二つの価格。輸出価格と国内価格など。②テレビなどで、現金正価のほかに、実勢価格〔実際に売買する時の値引きした価格〕のあること。(新明解国語辞典第八版から)

[類義]

一物二価

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兵庫県姫路市は2026年3月1日から、国宝で世界遺産でもある姫路城の入城料について、市民と市民以外で分ける「二重価格」を導入しました。市内在住者(18歳以上)は従来どおりの1000円で、市民以外は2.5倍の2500円に引き上げられました。18歳未満は市民・市民以外とも無料。見込まれる増収分は、城の維持管理やインバウンド(訪日外国人)への対応費用に充てられるといいます。

こうした観光地の動きは姫路城に限りません。北海道では札幌市の「さっぽろテレビ塔」が1月から高校生以上の入場料金を1000円から1200円に引き上げる一方、市民に関しては800円に値下げしました。京都市では、路線バスの運賃を市民と市民以外で区分する「市民優先価格」を2027年度に始める案が検討されています。

この「二重価格」。新しい言葉ではないものの、ここ数年で使用例が増えつつあるのは間違いありません。新聞記事データベース「日経テレコン」で日本経済新聞の朝夕刊に2000年以降「二重価格」が現れた記事を検索すると、2001年以降は1桁がしばらく続いていましたが、2024年と2025年に2桁となり増加傾向になっています。2026年は3月10日現在で早くも9件となりました。

これらの記事を読んでいくと、コロナ禍前後で「二重価格」の使われ方が変わってきていることも分かります。コロナ禍前は、商品やサービスの値引き前後の価格併記に関したもので、多くは消費者を惑わす不当表示が報道されたものでした。それがコロナ禍後になると、インバウンド向けの価格を高めに設定するオーバーツーリズム対策が大半を占めています。

訪日客の増加は地域経済に恩恵をもたらすとはいうものの、混雑やマナー違反といった問題も引き起こしています。これらが「二重価格」の導入ですべて解決するわけではありませんが、ひとつの方策として各地で広がるものになるのでしょう。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『新聞・放送用語担当者完全編集 使える! 用字用語辞典 第2版』(共著、三省堂)、『方言漢字事典』(項目執筆、研究社)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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