三省堂辞書の歩み

第26回 模範新英和大辞典

筆者:
2014年3月12日

模範新英和大辞典

大正8年(1919)3月30日刊行
神田乃武・横井時敬・高松豊吉・中村達太郎・江木衷・寺野精一・有賀長雄・肝付兼行・神保小虎・平山信共編/本文1906頁/三六判変形(縦170mm)

【模範新英和大辞典】5版(大正8年)

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【本文1ページめ】

明治44年(1911)の『模範英和辞典』を改訂した中型の英和辞典。書名に「新」だけでなく「大」が加えられたにもかかわらず、判型やページ数に大幅な違いはない。編者の10人は前著と同じ顔ぶれだが、樫田亀一郎・藤岡市助の2人が消えた。

前著を継承しているため、基本的な方針は同じである。見出しにウェブスター式の発音記号を表示し、語釈はカタカナ交じり文。常に大文字で書き始める語には「‖」を付し、多く使用しない語には「†」が付された。そして、日本的英語表現の熟語は“ ”で括って例示してある。

本書は1頁が60行で本文1906頁だから、単純計算すると11万4360行ある。前著の初版は1頁が56行で本文1843頁、10万3208行になり、増加は1万1152行(186頁分)となる。しかし、大正5年に増補された263頁を加えると合計11万7936行になり、3576行(60頁分)の減少となる。

本書の本文1ページには5項目で46行あり、その部分が前著では3項目の9行だった。Catは11行から19行に増えている。4行目までは同一で、5行目以降の熟語が増えたのである。Dogは12行で変化なし。改訂によって行数が増えている項目があり、大正5年の増補も本文に反映させているから、合計行数の減少は項目の削除も行われたことを物語る。

付録の「略語解」「英米常用他国語句」「外国地名人名一覧」「外国地名用語解」「外国貨幣表」「度量衡表」は前著と同じ。2色刷りだった「類語及対語」がなくなり、前付の「発音符号表」は2色から黒1色になった。

●最終項目

Zyxomma, n. 【動】一種ノ蜻蛉(トンボ)[印度産].

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●「猫」の項目

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●「犬」の項目

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筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目(これらの項目がないものの場合は、適宜別の項目)を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。