ローマ字びき実用国語字典
大正8年(1919)11月29日刊行
藤岡勝二編/本文1363頁/三五判変形(縦130mm)
三省堂の辞典で書名に「国語」が使われたのは、本書が最初である。「実用」「字典」とあるように、漢字表記を主とする現在の用字用語辞典に近い。語釈がある項目は少なく、同音・同訓や自動詞・他動詞がある項目に限られている。
内容は、大正6年の『ABCびき日本辞典』と共通点が多い。見出しは改正ヘボン式で、「ん」に相当する撥音は「n」だけを使う。見出しに語構成のハイフンがあるが、活用語の語尾は表示されていない。品詞の表示はなく、動詞・形容詞だけは活用の種類などを語釈の後に記載してある。仮名遣いは、歴史的仮名遣いを誤りやすい語に限り、見出しの後にカタカナで掲載。漢字表記欄は送り仮名を省いている。
基本的には『ABCびき日本辞典』を簡略化し、副詞・接続詞などの国語項目を補ったものと見られる。収録数は、小型辞典でありながら約8万3000項目もある。
単一の漢字項目などに草書体の図版を掲載したことが、今までにない工夫だった。また、折り返した行を前後の項目の余白に入れ込む場合、ブレース記号「 }」が使われた。
●最終項目
Zuzu-tsunagi(ズズ-)数珠繋。
●「猫」の項目
Neko 猫。小獣の名;芸者;うはべのつつしみ.
●「犬」の項目
Inu 犬・狗。獣の名;諜者.