広辞林
大正14年(1925)9月25日刊行
金沢庄三郎編/本文1763頁/菊変形判(縦201mm)
本書は『辞林』の全面的な改訂版である。『辞林』の初版は明治40年(1907)に発行され、同44年に本文を24頁増やした増補があった。
大きな変革は見出しの仮名遣いにある。まず、漢字音の仮名遣いを「写音的仮字遣」と称する表音式にして、歴史的仮名遣いの不便を軽減した。また、促音の「っ」だけに使われていた小書きを拗音の「ゃゅょ」でも用いた。
外来語の長音符号「ー」は、「あ」の前に配列した方式を変え、読まない方式にした。すなわち、「アーチ」は「あち」の後にくる。これは、のちに外来語辞典や百科事典などの主流となった方式である。
本書は『辞林』の縮刷版と同じ4段組で、活字が小さくて読みにくかった。昭和 9年(1934)の新訂版では、『辞林』初版と同じ3段組に戻されている。奥付の版数(刷数)は連続していて第160版が最初の新訂版である。
なお、初版でも新訂版でも、足助直次郎が編纂に尽力した旨が凡例に記されている。新訂版では、見出しに古語や方言、漢字音を表す記号が付かなくなった。
『広辞林』はその後も改訂を続け、昭和33年(1958)に新版、昭和48年(1973)に第五版、昭和58年(1983)に第六版を発行。「第五版」は『辞林』から数えた版数である。
●最終項目
(初版)
をんな[女](名、副) ((「をみな」の音便))①め。めのこ。をうな。をなご。女性。婦人。②温柔なる天性を有するものとしての婦人。③はしため。つかひめ。下女。下婢。
(※子項目は画像を参照)(新訂版)
をんなめ[妾](名) そばめ。めかけ。てかけ。
●「猫」の項目
(初版)
ねこ[猫](名) ①【動】食肉類の小獣、多く人家に飼養せらる、頭円く尾長し、体軀は狭長にして屈伸自在、体に柔毛密生し毛色種種あり、瞳は夜間円大なれど日中には豎針状となる、よく鼠を捕ふ、もと熱帯地方の動物なるが故に、性来暖気を好む。②{芸者の異称。③{知りて知らぬさまをなすこと。又、其人。④{本性をつつみかくして平凡をよそほふこと。又、其人。⑤{土製の「あんくゎ」。(東京の方言)。
(※子項目は画像を参照)(新訂版)
ねこ[猫](名) ①【動】食肉類の小獣、多く人家に飼養せらる、頭円く尾長し、体軀は狭長にして屈伸自在、体に柔毛密生し毛色種々、瞳は夜間円大なれど日中には豎針状となる、よく鼠を捕ふ、もと熱帯地方の動物なる故に、性来暖気を好む。②芸妓の異称。③知りて知らぬさまをなすこと。又、其人。④本性をつつみかくして平凡をよそほふこと。又、其人。⑤土製の「あんくゎ」。(東京の方言)。⑥ねこいらず。
(※子項目は画像を参照)
●「犬」の項目
(初版・新訂版)
いぬ[犬](名) ①【動】食肉類の獣、世界至る所に家畜として飼養せらる、性怜悧にして、視官は鈍けれど、聴官と嗅官とは最も鋭敏なり、種類極めて多く、用途頗る大なり。②まはしもの。諜者。
(※子項目は画像を参照)