模範国漢文辞典
昭和2年(1927)11月8日刊行
三省堂編輯所編/本文(国語之部)744頁+(漢字之部)304頁/菊判半裁(縦153mm)
本書は、明治39年(1906)刊行の『国漢文辞典』の後継にあたる辞典である。本の体裁は、大正7年(1918)刊行の『国漢文辞典』縮刷版に近い。
前著との大きな違いは、「国語之部」と「漢字之部」の二部構成になったことだ。収録した語句は、中学校・師範学校・高等女学校などの教科書や試験問題から広く選択したという。例えば、前著の「例言」に使われた「前人」や「未発」は、ちゃんと項目になって掲載された。
ただし、国漢文辞典は和語と漢語に特化したものなので、外来語を載せることはしていない。それでは不便だという声があったのか、昭和7年からは「外来新語解」16頁(約1200語)を追加した普及版(B6判)が刊行されている。
国語之部の見出しは、おおむね文部省国語調査会制定の仮名遣改定案(大正13年)によった「写音的仮名遣」となり、かなり引きやすくなった。写音的仮名遣いは、三省堂では大正14年(1925)刊行の『広辞林』で音読語に限って採用されたが、本書では訓読語にも適用されている。
さらに、促音・拗音の小書き仮名が見出しだけではなく、歴史的仮名遣いの語釈にも用いられている。また、語構成を示す区切りが見出しに加わった。
文法情報に関しては、前著では動詞・形容詞の語尾変化を載せていた。本書では、動詞は自動詞・他動詞の区別と活用の種類を載せ、形容詞はク活用・シク活用の区別を載せている。
漢字之部には、「部首別索引」37頁と「総画索引」28頁が前後に配置され、読めない字でも引くことが可能である。文部省国語調査会の査定による常用漢字の場合は「常用」の表示があって、字体整理案(大正15年)に基づく字体は親字のすぐ下に同じ大きさで掲載された。
漢字の音は、漢音を右側に、呉音を左側に掲載。共通の場合は中央に載せ、唐音・宋音・慣用音があれば括弧で掲げる。韻字と四声も載っているから、まるで漢和辞典のようだ。そして、熟語は和語も漢語も読み方だけを載せ、国語之部で意味を引くようにしてあるのだった。
●最終項目