今回は,とくに東北弁の発音を上手にとらえた英語とのシャレ,漢字のコラボの例を紹介します。
最初の例は,青森県の県庁所在地の青森市で「食のまち・青森市」をPRするための方言メッセージ「め~ど~ in 青森!」です【写真1】。幟などが青森市内の各所で見られます。これについて,青森市のウェブサイト内//www.city.aomori.aomori.jp/view.rbz?cd=9058で,制定の経緯や,この方言メッセージが公募によるもので,作成者のお名前,などが説明されています。
この方言メッセージの言語的解説も,《作品の簡単な説明》のなかで適切になされています。的確かつ簡潔なので,そのまま引用します。
“津軽弁で「美味しいよ〜」「旨いぞ〜」を意味する「め〜ど〜」と,Made in Aomori(メイド・イン・アオモリ)(青森産品)の「Made」をかけています。”
2例目も,青森県の例です。平内町(ひらないまち)での漁業体験イベントのチラシです。メッセージが「漁船で行GO!」となっています【写真2】。これは,東北弁(千葉県以北の関東地方も)の「語中におけるカ行音・タ行音の濁音化」現象を,上手に活用したものです。小さい字で「ぎょせんで いご~」とも書いてあります。まさに,東北弁だからこそ実現したシャレなのです。この濁音化現象のない方言では考えられないものですね。
3例目は,英語ではなく,漢字の当て字です。東北弁では,立腹することを「ゴセオヤグ」また「ゴーシャク」「ゴセヤグ」「ゴシャグ」といいます。「後世を焼く」が語源だといわれています。仏教に,腹を立てると来世での安寧をみずから焼き払ってしまう=怒る心はいったん静めてみよう,との教えがあり,それがもとになっているとの推定です。その「ゴーシャク」を,秋田県で「超神ネイガー」(第26回で紹介)シリーズでの変身のときの掛け声になり,「豪石」の当て字がなされています。さらにネイガーのグッズの一つとして「豪石クッキー」が発売されています【写真3】。
方言メッセージのなかは,このように,一見,他のことばのようにして私たちの目に入ってくる例もあります。皆さんも気を付けていると見つかります。