英語圏以外でコインランドリーを探すときにはどうしたらいいでしょう。インターネットで翻訳ソフトを使えば、イギリス英語launderetteか アメリカ英語laundromatの訳語が見つかります。グーグルGoogle翻訳を使って、世界の主要言語で試してみました。訳語が出てきたら、英語に訳し戻して、訳し戻しても「コインランドリー」の意味になった語を以下に掲げます。
日本語 JP コインランドリー 英語 EN Laundromat, launderette, coin laundry フランス語 FR laverie automatique スペイン語 SP autoservicio lavandería, lavandería de monedas イタリア語 IT lavanderia a gettoni ドイツ語 DT Münz-Waschmaschine 中国語 CH 投币式洗衣机, 自助洗衣房 韓国語 KR 코인 런드리, 론드로 마트
こんなふうに、店を探すには地元の言い方を知る必要があります。この翻訳手法は、美容院・靴直し・薬屋など色々な施設を探すのに応用できます。でもインターネットに載ってない店もありますから、ホテルの人に聞くという古典的方法が確実です。
歴史を押さえましょう。【図3】を見てください。グーグル エヌグラム ビューアー Google Ngram Viewerで約200年間の変化を示します。アメリカ英語では、赤laundromatが1940年代に使われはじめ、1990年頃がピークでした。代わりに青coin laundryが広がっています。図は示しませんが、イギリス英語では、launderetteが1950年代に使われはじめました。laundromatも1960年代から使われましたが、今は減りつつあります。英語の中のアメリカとイギリスの違い(つまり方言差)が広がりつつありました。
(図はクリックで拡大)
この英米の違いが世界全体に広がりそうです。グーグル トレンズGoogle trends(第257回)で検索すると、国ごとの使用率が濃淡地図で示され、英米の違いがはっきり分かります。また2004年から現在までの変化が分かります。【図4】に示します。全世界でみると、トップの赤laundromatが増え続け、第2位の青coin laundryと第3位の黄launderetteは横ばいです。この調子だと、アメリカ英語のlaundromatが将来世界に広がるでしょう。
実物登場初期には、方言差が生じるのですが、のちには(公的な言い方は)統一されます。規模を広げると、地球上の諸言語にもあてはまります。コインランドリーの呼び方も少しずつ統一に向かうでしょう。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。