道を歩いている時、気にとめる方は少ないと思われますが、マンホールの蓋には、さまざまなデザインが工夫されています。地域の見どころであったり、伝統行事であったり……。
なかでも、本サイトにふさわしい「この一枚」がこれです。
設置者である犬山市のご担当(水道部 下水道課)の方に、お話を伺ってみました。
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●尾張弁をあしらったねらいは?
平成10年に施行された「環境4条例」のPRの一環として設置されたものです。硬い表現を避け、インパクトを持たせるために、このようなデザインとなりました。
●反響・表現効果は、いかがですか?
データ等はありませんが、珍しいタイプのマンホールですので、一定のPR効果はあったのではないかと思います。
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確かに、マンホールの蓋に方言があしらわれているのは、珍しいと思われます。皆さんの地元にもあれば、是非とも情報をお寄せください。
ところで、キャッチコピーに使われている「ちょ~」ですが、方言辞典等では、次のような解説がなされています。
①山田秋衛氏『随筆 名古屋言葉辞典』(名古屋泰文堂 1961.8)
チョウ チョウは頂戴の省略語であり、いつの頃にかダイを切り捨てて上だけが独立したもの。共通語では「私にもチョウダイ」「また是非来てチョウダイ」等を「わたしにもチョウ」「また来てチョウよ」と使われる。名古屋人は特にチョウを多く口にするが、大体宗春時代にできた言葉で下層階級に拡がり、今も名古屋ことばの代表語。
②鈴木勝忠氏『東海の言葉辞典』(名古屋泰文堂 1969.10)
ちょう 頂ちやう ちょうだいの略、依頼の終助詞
③清水義範氏『やっとかめ!大名古屋語辞典』(学習研究社 2003.9)
ちょう 「…してほしい」という願望または要求の言葉で、これも使用頻度が高い単語である。「ちょー」「ちょうせ」「ちょうよ」も同義語。丁寧語は、「ちょうでゃあ」。(例)「この本、買ってちょうでゃあ」(この本、買ってください)
と、いうことで、かつての尾張藩域を中心とする「尾張方言」の代表格と説明されていますが、現在、犬山市民の日常語からは、消えつつあるようです。
とは言え、国宝犬山城への観光ルート・本町通りにある「旧磯部家住宅」(登録有形文化財)の茶室の愛称は、「よってちょう庵」。
地元らしさを訴えるには、愛着のある大切な言葉であると思われます。