博物辞典
昭和13年(1938)2月15日刊行
藤本治・岡田弥一郎・三輪知雄編/本文895頁/菊判(縦226mm)
明治以降、昭和初期(戦前)まで「博物」は小・中学校で教科のひとつだった。それ以前は、奈良時代に中国から伝わった「本草学」があり、江戸時代に盛んとなっている。
「博物」は「博物学」の略で、『大辞林』第三版によると、
「自然物、つまり動物・植物・鉱物の種類・性質・分布などの記載とその整理分類をする学問。特に、学問分野が分化し動物学・植物学などが生まれる以前の呼称。また、動物学・植物学・鉱物学などの総称。自然誌。自然史。ナチュラル-ヒストリー。」
日本における博物学の辞典は、以下のものが出版された。
『博物新辞典』三余学寮編、田中宋栄堂、明治40年(1907)
『博物学辞典』東京理科学会編、水野書店、大正元年(1912)
『博物辞典』畠山久重著、科外教育叢書刊行会、大正7年(1918)
『博物辞典』伊藤武夫ほか著、弘道閣、昭和7年(1932)
本書は、中等教育に関する博物学の全般にわたる1万5000語余りを収録し、既刊の博物辞典を質・量ともに凌駕したものである。そして、これ以降に博物学の総合的な辞典は出版されていない。
編者は、藤本・岡田が東京高等師範学校教授の理学博士、三輪が東京文理科大学助教授だった。序文には、22人の協力者が挙がっている。
見出しは発音仮名遣いとし、歴史的仮名遣いはルビで示された。動植物の学名はイタリック体になっている。
既刊の辞典は4冊とも縦組だが、本書は欧文が頻出するため横組で、活字の大きさは6ポイントしかない。本文の途中にはカラー図版や写真などが別紙で39頁入っている。
附録は184頁あり、詳細は以下のとおり。
「植物分類表」12頁、「動物分類表」5頁、「鉱物分類表」3頁
「火成岩分類表」1頁、「地質時代的分布表」4頁、「地質時代区分表」8頁
「学校及び研究所」2頁、「学会・学術団体」2頁
「雑誌・報告書」8頁、「参考書」15頁
「全国高山植物採集一覧」6頁、「天然記念物指定に依る植物採集禁止地」3頁
「欧文索引」81頁、「動植物名漢字索引」30頁
本文の内容もさることながら附録の充実ぶりを見ると、むしろ大学生以上の研究者を対象にしたような印象があり、書名を「大辞典」にしてもよかったと思えるほどである。
●最終項目
●「猫」の項目
●「犬」の項目