明解国語辞典
昭和18年(1943)5月10日刊行
金田一京助編/本文1090頁/A6判(縦148mm)
明解国語辞典(改訂版)
昭和27年(1954)4月5日刊行
金田一京助監修/本文919頁/A6判(縦147mm)
『明解国語辞典』の編集は昭和14年秋に『小辞林』(昭和3年)の改訂を目指して始まった。編者は金田一京助になっているが、実質的な編集主幹は見坊豪紀、補佐に山田忠雄、アクセントは金田一春彦だったことが序文で分かる。
本書の基本方針は、引きやすいこと、分かりやすいこと、現代的なことである。そして「標準アクセントの解説」19頁が本文の前に載せられた。
見出しは表音式の仮名遣いによる五十音順。表音式の見出しは、昭和初期に多数派となっていたが、本書はどの辞書よりも徹底している。例えば「せいたう(正当)」は、『小辞林』や新村出編『辞苑』(博文館、昭和10年)などでは「せいとう」だったのを「せえとお」とした。促音の「っ」や拗音の「ゃゅょ」を見出しだけでなく語釈にも用いている点は『小辞林』と同じ。
五十音順の最後にある「ん」には「んま―[馬]」から「んもれる[埋れる]」まで19項目が載り、空見出しとはいえ空前絶後だった。また、外来語でも長音符号(ー)を使わず、母音を重ねて「アアケエド」とする。
動詞は文語形(おお[合ふ])も見出しになっているが、形容詞は口語形のみ。語釈も口語形で書かれ、説明を努めて平易にした。
収録した語彙は、約7万3000語。『小辞林』から古語や難解語など約1万6000語を削除し、時代に即した言葉など約8000語を追加した。さらに「常用略語集」11頁(約1000語)が付録となっている。
昭和18年は戦時中で物資が不足し、出版統制によって用紙の割当てが制限されていたため、特に学生用の国語辞書不足が新聞記事になった。そういう時機であったうえ、従来の内容を一新した現代的な辞書はたいへんに好評を得た。確認できた発行部数は以下のとおり。3版(=3刷)は未見だが、推定で合計すると2年間で約50万部の発行だったと思われる。
昭和18年5月 1版 6万部(定価4円)
昭和18年6月 2版 3万5000部(定価4円)
昭和19年6月 4版 5万部(定価5円)
昭和19年7月 5版 14万部(定価5円)
昭和19年7月 6版 12万部(定価5円)
昭和20年5月 7版 5万部(定価10円)
戦後は26年の19版まで増刷が続いた。三省堂で初めて「国語辞典」の書名を使った本書の成功が、まだまだ少数派だった「国語辞典」の普及に大きく影響を及ぼしたと言えるだろう。
27年に出た改訂版では、天沼寧、山田俊雄の援助があったと「あとがき」にある。
見出しは「現代かなづかい」(昭和21年)にせず、表音式仮名遣いのままだったが、え列の長音はやめて「せいとお(正当)」となった。見出しが現代かなづかいと違う場合、漢字表記欄のあとにカタカナで掲載し、歴史的かなづかいは和語だけを掲載した。漢字表記欄では、当用漢字表にない漢字、同音訓表にない読み方などに記号を付けている。
また、鼻濁音を「か°」と半濁音ふうに表示した。外来語に長音符号を使わないのは変わらず、文語形の動詞は見出しから削除された。
収録した語彙は、約6万6000語。初版から約1万4000語を削除し、約7000語を追加した。「常用略語集」はなくなり、本文に組み込まれたものが少なくない。
のちに「補遺(新語編)」1572語が別冊付録になり、判型を大きくした改訂新装版(昭和46年)では本文の後へ掲載された。補遺に載った最新の語は昭和41年(1966)制定の「体育の日」である。
●最終項目
●「猫」の項目
●「犬」の項目