三省堂辞書の歩み

第57回 三省堂国語辞典

筆者:
2020年12月23日

三省堂国語辞典

昭和35年(1960)12月10日刊行
金田一京助編/本文906頁/A6判(縦154mm)

【三省堂国語辞典】1刷(昭和35年)

【本文1ページ目】

『三省堂国語辞典』は『明解国語辞典』の姉妹辞書として編集された。金田一京助が編集方針を決め、編集主幹は見坊豪紀、補佐に山田忠雄、金田一春彦。さらに本書の協力者には、市川孝、酒井憲二、進藤咲子、都竹通年雄、日野資純、若杉哲男がいる。

姉妹辞書といっても『三省堂国語辞典』は『明解国語辞典』の編集方針を引き継いでいた。ただし、アクセントの表示はない。一方、名称を引き継いだ『新明解国語辞典』(昭和47年)は山田忠雄が編集主幹となり、対象とする年齢層を上げるなど方針が大きく変化した。

本書の見出しは現代かなづかいとなり、和語には歴史的かなづかいも載せた。漢字表記欄では、当用漢字表にない漢字、同音訓表にない読み方などに記号を付けている。さらに、小学校で習う教育漢字を教科書体活字で区別した。

収録した語彙は、約5万7000語。『明解国語辞典』改訂版から約1万4000語を削除し、約5000語を追加した。新聞・雑誌・書籍・放送などから用例を採集し、新たな言葉や意味の追加に努めている。そのため、日本語の変化に最も敏感な国語辞典なのである。見坊豪紀が生涯に集めた言葉の用例カードは145万枚にのぼった。

 

『三省堂国語辞典』は、判型を大きくした新装版を昭和43年に刊行。その後、改訂が重ねられて現在に至っている。

第二版 昭和49年発行 約6万2000語収録
第三版 昭和57年発行 約6万5000語収録
第四版 平成4年発行 約7万3000語収録
第五版 平成13年発行 約7万6000語収録
第六版 平成20年発行 約8万語収録
第七版 平成26年発行 約8万2000語収録

●最終項目

●「猫」の項目

●「犬」の項目

筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
(不定期掲載です)