男性のおしゃれで特に目立つのは、ネクタイでしょう。色・柄・デザイン・素材・大きさ(幅)などにその人のセンスや好みが表れますし、ずいぶん印象が違ってきます。
ちょっと変わり種のネクタイとして、「方言」をあしらったものがあります。
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以前(平成6年)、大阪なんばの高島屋デパートが、父の日のプレゼント用などにと、おもしろ企画として、大阪の名物=タコ焼きや、けつねうどん、通天閣、関西空港、などをデザインしたネクタイと並んで、「方言ネクタイ」を何種類も作って大変話題になったことがありました。(詳しくは、日本方言研究会編『方言の現在』所収の拙稿「方言の有効活用」を参照)
おそらく全国的には同様な“ご当地ネクタイ”がいろいろ登場しているだろうと思いますが、そのひとつ、金沢の「方言ネクタイ」を手に入れました。
パッと見ただけでは「方言」とは気づかないかもしれませんが、目を近づけてよ~く見てみると、次のような方言が実にたくさん、ネクタイの全面に斜めにびっしりと並んでおり、それに太字で書いた語が混じっていて、変化を付けるアクセントになっています。
あだける あてがいな あのおんね あらみち あんか
いーじー いかなてて いさどい いじっかしい
うつぶらいかく うまそい うら えびす えんじょもん
おいだすばせ おいね おゆるっしゅ かさだかな
がっぱになる かやる がんこ きときと きまっし …
このネクタイは、金沢美術工芸大学の視覚デザイン専攻の学生たちが、金沢をアピールしたいとデザインしたものだそうで(平成17年)、方言版(エンジ・紺の2色)の他に、友禅流し、加賀鳶、加賀野菜、石川県の地図を図案化したものなどもあり、全部で6種類、色違いを入れると合計13のバラエティーが作られたとのこと。
正絹で2500円(+税)と手頃な価格設定もあって、地元の人たちにも、また観光客からも大変好評で、息長く売れ続けており、平成19年には第2弾も作られ、このときに方言版はピンク・紺・ダークグレーの3色に増えた由。
方言ネクタイには、書かれている方言とその意味がわかりやすいように、大剣(幅の広いほう)の内側にポケットを付けて小さな「方言のリスト」を入れる心配りまでされています。
それには「金沢弁―日本の共通語―English」の3つが対比されていて、「Let’s start step1 ア行」から「Finale! step7 ヤ行 so, you are a master of kanazawa dialect!!」まで、合計77語が紹介されています。
裏表紙には、「Let’s spread kanazawa dialect over the world 金沢弁を世界中に広めよう!」とあります。
その土地らしい名産品や、代表的な風景、建造物、食べ物などと並んで、地元の方言がネクタイに取り入れられ、それが男性の胸元を飾って地域PRの一助にもなっている……。
考えると、ちょっと楽しい遊び心の表現になっています。
《参考》 『北国新聞』(平成17年12月3日朝刊)で、このネクタイのことが紹介されました。また、金沢の古書店「近八書房」のブログでも、この新聞記事と方言ネクタイが写真入りで紹介されています。//chikahachi.exblog.jp/2585953/
情報提供:加藤和夫・金沢大学教授