昨年、NHK大河ドラマ「龍馬伝」が放送されました。福山雅治さん演じる坂本龍馬は、本物に比べると随分男っぷりがよくなりました。奥さんのおりょうさんもさぞ満足だったでしょう。教科書等でおなじみの龍馬は、小柄で痩せ型、ふところに右手を入れ、台にもたれかかっています。一説によると写真でふところに手を入れているのは、銃を持っていたからだと言われています。男優の福山さんが「団子屋でまっちゅうぜよ」などといえば、おりょうさんでなくても多くの女性が団子屋へ押しかけることうけあいです。「おー 今日も待ちよったぜよ。悩みがあるがか? 何でもゆーたらえいがよ」(第113回参照)などと言って日本中のふがいない男性の代弁をしてくれます。
このように「龍馬伝」では、土佐方言が多く使われていました。昨年は、観光客も増加して市内では今も多くの方言が見うけられます(第176回参照)。例えば「心はいつも太平洋ぜよ」【写真1】と工事現場に貼られていました。高知県は太平洋に面していて、空港には「カツオやけん たべてみいや うまいけん」【写真2】とカツオの宣伝がありました。方言番付の扇子も見つけました【写真3】。龍馬のイメージにぴったりの「~ぜよ」【写真4】は、絵葉書になっています。左手に銃をかざした龍馬ですが、「I was born in Kochiぜよ。」と読むのでしょうか。なるほど方言と英語のコラボレーションです。とても男性的なイメージの強い方言です。
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このシリーズでは、これまでさまざまな方言グッズが紹介されてきました。その中から78の方言について、それぞれの方言を聞いたとして、話し手が男性をイメージするか、女性をイメージするか、関東出身の大学生14名に共通語訳をつけてたずねました。男性をイメージするという人が多かったのは、土佐方言の「うまいぜよ・待っちゅうぜよ」、大阪方言の「すんまへん・どないやねん・好っきゃねん・ええか・ごっついな」、石川方言の「乗らんけ」、宮崎方言の「どげんかせんといかん」などでした。一方、女性をイメージする方言の例は、京都方言の「おこしやす・そうどすえ・おいでやす」、山口方言の「おいでませ」、宮崎方言の「よう来たなせえ」などでした。茨城方言の「暑かっペ」や福島方言の「休んでいがんしょ」、山形方言の「なんじょだべ」(いかがですか)など、東北方言は、どちらともいえないという回答が多かったです。
同じ男性をイメージする方言でも土佐方言は、志士にぴったりという印象を受けるのに対して、大阪方言は、どことなく腰の低い商人文化を思わせる一面があるようです。