地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第267回 井上史雄さん:世界の方言10万円
1000 dollars for world dialect

筆者:
2013年8月17日

ふと思いついて、インターネットで方言みやげについて英語で検索してみました。Dialect souvenirではめぼしいものがありませんでしたが、Dialect postcardでは色々な情報が見つかりました。その一つは多様な内容です。以下のホームページです。

//www.zazzle.com/

//www.zazzle.co.jp/ (日本語版)

ホームページの中でdialectで検索すると、たくさんの方言グッズが画像で出て来ます。全部で41ページもあります。方言と直接関係ない品もありますので、それを除いたとしても全部買ったら10万円を超えそうな感じです。全部買うだけの資力はありません。買っても置き場所がありません。

でも画像でバラエティーを楽しめるのです。各国の方言グッズが並んでいますが、日本のも登場します。その大部分は関西弁。写真のバッジも、関西弁です。第262回でふれたとおり、大阪(と京都)は日本の方言の最高峰なのです。

誰か話しかけてくれへんかな・・?

「誰か話しかけてくれへんかな・・?」という表現は、これまで日本でも海外でも見たことがありません。各国語を並べてTシャツにしたら、同じデザインで世界中で売れるでしょう。本当に話しかける人がいたら、国際親善、草の根交流にも役立つでしょう。退職後はこれを専門に売る店でも開きたいくらいです。

方言グッズをインターネットで公開するのを、かつて「バーチャル方言博物館」と名付けました。この三省堂の連載は一環をなすものです。「博物館」の展示物は買えません。でもzazzleの実物はネットで買えます。さしずめ「バーチャルミュージアムショップ」と言ったところでしょうか。

zazzleの本社はアメリカにあるようで、ヨーロッパ各国と日本、タイなどの方言グッズを売っています。方言の経済価値は高まって、ついにグローバル産業まで登場したと、みることができます。zazzleは2005年の夏にスタートしたそうです。「バーチャル博物館」を思いついたのはそのころです。しかし我々の連載が始まったのは2008年ですから、zazzleは先輩にあたります。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 井上 史雄(いのうえ・ふみお)

国立国語研究所客員教授。博士(文学)。専門は、社会言語学・方言学。研究テーマは、現代の「新方言」、方言イメージ、言語の市場価値など。
履歴・業績 //www.tufs.ac.jp/ts/personal/inouef/
英語論文 //dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/person/inoue_fumio/ 
「新方言」の唱導とその一連の研究に対して、第13回金田一京助博士記念賞を受賞。著書に『日本語ウォッチング』(岩波新書)『変わる方言 動く標準語』(ちくま新書)、『日本語の値段』(大修館)、『言語楽さんぽ』『計量的方言区画』『社会方言学論考―新方言の基盤』『経済言語学論考 言語・方言・敬語の値打ち』(以上、明治書院)、『辞典〈新しい日本語〉』(共著、東洋書林)などがある。

『日本語ウォッチング』『経済言語学論考  言語・方言・敬語の値打ち』

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。