今回はちょっと趣向を変えて、方言絵はがきをみます。「買える方言」の典型ですが、通俗的で、文字化も不正確かと思われて、学問対象としては、無視されていました。しかし日本の方言絵はがきでは過去の方言会話が分かるので、貴重です。
試しに、山形県庄内地方の例をみましょう。袋には「あつみ方言入 あつみ自慢」と書いてあります。裏の切手欄に「一億一心」と書いてありますから、戦時中のものです。1枚全体を図1に示します。方言と訳の部分を拡大して、図2に示します。
フテ(食って)など、古い発音の特徴をよくとらえていて、信頼できそうです。ただ「やゆよ」や「つ」を小さく書く習慣がなかったので、発音を確かめるためには、方言を知っている人の知恵を借りる必要があります。幸いに筆者はここの方言のネイティブです。できるだけ当時の発音に近く、書きあらわしてみましょう。カ行とタ行の濁音化がみられます。「カ゜」「コ゜」で鼻濁音をあらわします。