最近人と人とが面と向かって話さなくなってきているように思えます。電車の中を見回してもメールを送信している人やゲームをしている人が多く、たいへん静かです。人が話していると思ったらスマートフォンに向かって「○○さんへメール」「東京駅マップ」などと言ってメール画面を立ちあげたり、地図を見たりしています。
人間が無口になったかわりに、家庭では掃除機、風呂のお湯はり、電子ジャーなどが、公的場面では自販機、ATMなどが話すようになりました。電子ジャーが「ブタまっしぐら」などと警告します。また、動物が方言で人にあれこれ指図したり注意したりします(第214回、第229回参照)。
共通語ではつまらない、もっと楽しく聞きたいという要求に答えて方言を話すグッズが増えてきています。リラックスできない、本音が言えない社会生活を背景に、方言を聞きたいという心理が働いているようです。スマートフォンにも「方言萌え目覚まし」のアプリも加わりました。
日本のアニメのキャラクターが話す方言の数を調べてみました。関西方言93(摂津弁、泉州弁、河内弁、播磨弁、京都弁、奈良弁、和歌山弁など・以下参考資料表記のまま)、九州地方の方言12(九州弁3、博多弁4、大川弁1、熊本弁2、鹿児島弁1、薩摩弁1)、中部地方の方言9(名古屋弁7、中部弁1、金沢弁1)、四国地方の方言8(土佐弁7、伊予弁1)、東北弁8(東北弁4、山形弁1、岩手南部弁1、津軽弁1、秋田弁1)、中国地方の方言6(広島弁5、鳥取弁1)、北海道弁4、沖縄方言4(沖縄弁・琉球方言4)、江戸弁3(べらんめえの口調という説明)です。全部で147の方言が登場します(ニコニコ大百科(仮)2012年12月調べ)。
グラフを見ると、アニメの世界では西日本の方言が勢力を持っていることがわかります。声優の数も影響するかもしれませんが、言語経済力を反映していると思われます。
方言アニメに登場する人物には、高校2年生女子というキャラクターが多く、髪の色、誕生日、血液型、慎重、体重、スリーサイズが明記されて、人間味のなさを補おうという傾向が見られます。例えば、『咲-Saki-』に登場する高校2年生の染谷まこは、亡くなった祖父の影響で広島弁で喋るという設定になっています。