方言を使って(活かして)遊ぶものとして、これまでに『方言かるた』や『方言トランプ』を紹介していますが、それらは昔ながらの、伝統的な、いわばアナログなカードゲームでした。近年、かるたを読み上げるのにCDを活用している例が増えているのは、いかにも現代的ですが……。(『方言かるた』は第33回、35回、82回、105回、210回を、『方言トランプ』は第208回、210回、228回を、「ご当地(方言)検定」については第68回、103回を参照)
それらに対して、非常に今ふうでデジタルなものに、携帯ゲーム機の素材として「方言」をテーマにしたものがあります。今回はそれを取り上げます。
NINTENDO DS『ご当地検定』(2006年発売)がそれで、商品説明には次のように書かれています。
47都道府県から好きな県を選んで、その地域の名産・名所・方言などを答えていくお遊び & 実用ソフト。県民度はもちろん、日本人度が試される。ゲームモードはお試し検定から、4人まで遊べる対戦検定、シルエットクイズなど4種のご当地ミニゲーム、すれ違い通信モードなどを搭載。問題数5000、名所 & 名産の写真500点、方言ボイス940を収録。進むにつれて、こしかけ東京都民、にわか京都府民、かくれ埼玉県民など、楽しい称号が手に入る。
(画像はクリックで拡大します)
「方言」に関しては、各都道府県の特徴的な語、例文10と単語10の計20語ずつが入っていますから、都合940語。それを実際に地元の話し手の声で聞くことができます。
このソフトの「方言」部門の企画・開発には、方言研究者も関わっています。
佐藤亮一・井上文子・竹田晃子(たけだ・こうこ)さんなどがそのメンバーですが、竹田さんの話では、このゲームで取り上げる方言を選ぶにあたっては、①伝統的な方言と新しい方言の両方を入れること、②他地域の人にとってその方言の特徴がわかりやすく紹介されていること、③ゲームなので発音を聞いて楽しくなるような文言を選ぶこと、などには特に意を用い、正確でできるだけ興味深いものになるように配慮したということです。
商品開発の際、ともするとその地域らしさが何となく出ていればいいと考え、方言をいわば彩りとして、小手先で利用する傾向がなきにしもあらずですが、それは決して誉められたことではありません。
子供の遊びの道具だから……と軽く考えるのではなく、逆に、子供たちが接するものだからこそ、正確な情報に基づいてきちんとしたものを作って提供しようと考えて制作する。そうするには手間も時間も費用もかかりますが、これは非常に大切な姿勢だと思います。
この『ご当地検定』に添付されている「取扱説明書」を見ると、各県庁や市町村、観光協会、それぞれの分野の専門家など、実に多くの人たちの協力があったことがわかります。
「方言はその土地その土地の、なくてはならない毎日の暮らしのことば」です。長い間使われ続け伝えられてきたからこそ、今日まで受け継がれ、その結果、いま私たちの目の前にあるのです。改めてそのことに思いを致したいものです。
《参考》『ご当地検定』(株式会社スパイク・チュンソフト)の、各都道府県の地元の話し手による方言の一部は、//www.spike-chunsoft.co.jp/gotouchi/map.html で聞くことができます。