このシリーズでは、地域語(方言)が社会の中でどう活用されているかに着目しています。今回は中国語をみます。中国語は中国以外に周辺各国でも使われています。当然国(地域)による違いがあります。中国語の新しい言い方についても、香港発だったり、台湾産だったり、マカオ生まれだったりします。新しいことばや方言に漢字がないときは、アルファベットで記すことがあります。台湾の「A菜」についてはすでにふれました(第152回=「魅せる方言」186ページ)。
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台湾には、「QQ」で書き表す擬声擬態語があると、台湾人の先生に聞きました。固くてすべりがよいものに使うそうです。1998年に夜店の看板で見つけました。2011年に台北の北の淡水の店の看板でも見つけました【図1、図2】。「QQQ花枝焼」「QQQ的花枝焼」と書いてあります。「花枝」(hoe-ki、ホェギー)は台湾語(ミンナン語、ホーロー語)で、いか・たこを言います。これがQQの味なんでしょう。
ちなみに、Lさんが台湾QQの画像情報を探し出してくれました。
//www.taipeinavi.com/special/5043721
中国からの留学生は、QQは「台湾映画の字幕で見たが、意味が分からなかった」と言っていました。中国には広がっていないようです(QQを名乗るインターネットの会社が21世紀にできたようですが)。
2013年に「QQ」をシンガポールの店で見つけました。さんざしのドライフルーツです【図3】。これは何通りにも楽しめました。まずことば。シンガポール製ですが、シンガポールの公用語の「英語・中国語・マレー語・タミル語」でなく、「中国語・英語・日本語」です。その日本語が、「QQ好み」「新しい楽しみなさい」となっているのも、楽しめました。
次に味も、楽しみました。ドライフルーツは、ヨーグルトに一晩漬けると、みずみずしい味に戻ります。さんざしを、ヨーグルト、飲むヨーグルト、水に漬けて、そのままの「QQ」味と比べて、楽しみました。ついでにドライフルーツミックス、ドライ野菜ミックス、干し柿、干し芋も、漬けて比べました。ヨーグルトでは水分が少なくて、固いまま残ることがありますが、飲むヨーグルトでは、全体が柔らかくなります。水だとふやけて味が溶け出してしまいます。柔らかめが好きな人は、飲むヨーグルトに入れるのがよさそうです。小学校の夏休みの宿題なみの実験ですが……。ちなみに、「切干大根=千切大根」(第207回)と小魚チップスも試しました。結果が気になるかたは、ご自分でどうぞ。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。