北陸・富山県は,東の東京,西の大阪,その中ほどに位置する名古屋の,日本三大都市圏からほどほどの距離の便利なところに位置しており,そのどこからも比較的訪ねやすい県だと言っていいでしょう。
都会での生活に疲れた人たちに,「たまには日頃の緊張や喧噪から解放されて、富山でゆったりのんびり過ごしてみませんか?」と誘うメッセージを誌名にした富山県庁発行の観光PR誌(全16ページ,季刊,無料配布)【写真1】があります。誌面上段には大きく『ねまるちゃ』,その上には小さく「くつろぎ、ときめき。富山で休もう。」とあり,タイトルのすぐ左下には,この号の内容「富山で休んでかれ。」〔…休んでいきなさい〕などの記事の見出しが並んでおり,左下には「パノラマ キトキト 富山に 来られ」というアピールも方言でしっかり書いてあります。「キトキト」は有名な富山の方言で,〔活き活き,溌剌とした〕という意味で,「富山に来られ」は〔富山にいらっしゃい〕という意味です。
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表紙をめくると【写真2】,遠景にはまだ雪の残る立山の緑の山肌が,近景には「みくりが池」の青く澄んだ湖面に流れ込んだ残雪が浮かんでいて,ちょうど今頃,汗が噴き出る真夏にこの風景を見ていると,汗も消えていきそうな涼しげな写真が紙面を飾っています。
そして誌名の由来が,見開きの左上に「「ねまる」とは富山弁で「座る・休む」の意味で,富山でゆっくりくつろいで休んで欲しいという願いをこめてつけられたネーミングです。」と解説されています。「~ちゃ」は,〔~(しなさい/なんです)よ〕という意味あいの文末詞です。前に大分方言の「~(っ)ちゃ」を紹介しましたが,第253回の『おおいたっ茶』,第278回のデパートの現金ポイントカード『ルッチャ!』の場合と同じく,富山の「ちゃ」も,「~といえば」⇒「といやぁ」⇒「てや」⇒「ちゃ」と変化してできたと考えられます。
発行元の富山県観光・地域振興局によると,部内でまず意見を出し合い,県出身の首都圏の若者たちと意見交換するなどし
富山県の観光キャッチフレーズ「富山で休もう」との連動
富山らしさが出ていて興味を引くもので,手にとってもらえるようなインパクトがあること
既存の観光課の観光パンフレット『ロカルちゃ』(ローカル+カルチャーの造語)との関連
これらを意識して決定したものだということです。
地域のより印象的なPRに,このようないかにもその土地らしさをアピールできる方言を活用するのは,特に観光客誘致などの分野においては昔からある手法の一つです。この連載でも第32回をはじめ,第36回,第44回,第111回,その他,各地での事例が多数報告されています。(この記事の後の「目次へ」「アーカイブへ」からたどることができます)
インターネット上でも,この『ねまるちゃ』を見ることができます。
//www.info-toyama.com/toyamakanko/statics/doc2/nemarucha/
「ねまるちゃとは?」をクリックすると,サイドバーにバックナンバーが出てきます。ここからこれまで発行された号がPDFで見られます。
今回とりあげた第4号は以下にPDFがあります。