先に私がお酒(ビール)の話(第98回)を書いたら、早速お酒に詳しい I 先生から訂正の連絡をいただいた。
「Russeは地域によって違うのかもしれませんが、少なくともバイエルンではRuss’nはヴァイツェンビールとレモネードを混ぜたものです。ふつうのビールとレモネードなら良く知られたRadlerです……」
他にも誤記訂正などあったのだが、煩瑣になるのでいちいちここには紹介せず、私個人の反省材料に使わせていただくことにする。I 先生、ありがとうございました。
以前にはケーキのサバランさえ口に出来なかったという、代々酒が飲めない(呪われた)家に生まれた私などが酒の話に口を出すと、必ず失敗するのは分かっていることなのに、懲りずにやってしまう。実は以前にもI先生に叱られたことがある。
『クラウン独話辞典』の最初の原稿が機械的に割り振られた際に、どういう手違いか私にWeinの項が回ってきた。ろくに飲んだことすらないワインのことを(これまでの人生で3回くらい口にしたことがある)、仕方ないのであちこちの辞書から引き写して何とか形にしたが、我ながらぼけた原稿である。いつも頼りにする妻も酒が駄目なので、今回ばかりは助けてくれない。悪いことはできないもので、これが I 先生に見つかってしまった。I 先生は覚えておられないだろうが、私のまずいWeinの原稿を見るなり、「駄目だよ、Weinのことを石井君なんかに書かせたら。原稿に魂が入ってない。」
石井の書くワインの原稿には魂が入っていない!けだし名言であって、I 先生らしい的確な上に味わいのある表現がひどく気に入って、前の原稿にも登場してもらった、急逝した故 F 先生に紹介した。故 F 先生は、飾らない飄々たる I 先生の人柄をかねがねとても愛していたので、このエピソードも喜んで聞いてくれた。そんなことまで思い出しましたよ……。
あ、ちなみにWeinの原稿はお酒に詳しい他の編集員の方々が全面的に改稿し、立派なものになっているので、読者諸氏は安心願いたい。