『英語談話表現辞典』覚え書き

(3) 切り上げ表現

筆者:
2009年8月20日

前回は本辞典の記述のなかから「文頭・文中・文尾」に注目して具体的な見出し語を例にとり、最近出ました、G(2007年第4版)、W(2007年第2版)、O(2008年発行)の3つの辞書の記述と比較しながら解説しました。今回は談話の構造のなかで、「話の終了を合図する」表現について述べてみたいと思います。

日本語では「それでは」やくだけた言い方で「じゃあ、ということで」などに相当する、話をこれで終了する旨を知らせる前置き表現があります。英語ではなかなか口に出てきにくい言い方ですが、以下、OKとwell、anywayを中心にみていきます。

本辞典のOkay [OK]の語義6に“OK, see you tomorrow at school, then.” “Yeah.” の例文とともに、「〈電話などの別れ際に〉じゃあね」という記述があります。友達同士などで、電話に限らず話をこれでやめるという意思を表示する表現です。Wには、例文はありませんが、語義6に「電話などで話を終わりにする前に用いる」という記述があります。Oにはこの語義は見当たりませんが、Communicative Expressionsを含め、OKにはかなりのスペースを割いています。Gはどういうわけか用例がなく、語義分けもありません。なお、談話の区切りという点では話題をかえることにつながり、その情報はOでは語義1「別の話題や行動を始めるとき」、Wの語義1後半「発言に続ける前に言う言葉」、本辞典の語義5の後半「話題をかえて*」にみられます。ただ、前者の使用法では話を終了するという点に違いがあることに注意しましょう。

使用頻度の高いwellにも話の切り上げと話題変更のふたつの用法がみられます。話題変更についてはどの辞書にもみられますが、話の切り上げについてはW(語義6「会話や活動の終了を示す」)とO(語義1「話の出だし・継続・変更・終了」、例文なし)に記述されています。本辞典では、話題の転換については語義5、切り上げ用法については語義4に峻別し、後者の用法では、〈中心となる話が終わったことを合図して〉という語用論情報のもとで、次のような用例を使って説明しています。

《会議の席で》 I’m sure this project will be completed by this weekend. Well, I see it’s just about time for lunch. このプロジェクトは週末には完結すると思う。それでは、そろそろ昼食にしましょう。

OKやwellのほかに、anywayにも切り上げ用法がよくみられます。Gにはこの用法の語義がみあたりませんが、W(語義2のc「会話を終えようとする際に」)とO(語義5「その場を立ち去りたいとき、または会話を終わらせたいときに」)には記述があります。本辞典では、〈会話を終えようとして〉という説明のあとに次のふたつの例文を添えています。

Anyway I’ll give you a ring tonight. じゃ、とにかく今晩電話するよ/ I’d like to go anyway, if it’s all right with you. よろしければ、私はこれで失礼させていいただきたいのですが。

自分のほうから話を切り上げるのはなかなか難しいことですが、このような簡単な語句を知っておくと、少しは言い出しやすくなると思います。

*辞書本文では「議題をかえて」とありますが、「話題をかえて」の誤り。

筆者プロフィール

内田 聖二 ( うちだ・せいじ)

奈良女子大学教授

専門は英語学、言語学(語用論)

主な業績:

『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)
『語用論の射程』(2011年)研究社

英語談話表現辞典

編集部から

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